月の輪通信 日々の想い
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夕方、父さんが、
「アユコにおみやげ。」
と白い包みを持って帰ってきた。
アユコがピョンピョン跳んでくる。
なになにっとゲンやアプコも寄ってくる。
包みを解くと、赤く輝く大粒のいちご。
箱のフタをとると、甘い香りがふわっと流れた。
先日(11月24日)の一日陶芸教室の時のこと。
いつものようにアユコが朝からお客様へのお茶だしやら、お食事の配膳やらをてきぱき手伝っ てくれた。
そして、最後にお茶室でのお茶席。
アユコはお茶室でお菓子をお出ししたり、お抹茶をお出ししたりする「半東(はんとう)」と言う給 仕のお役目を初めてつとめた。
初めてのお茶室デビューで心配したが、緊張しながらも粗相なく、つとめを果たしてくれ、アユコ 自身ちょっぴり自信をつけたようだった。
聞けばそのときのお客様は、茶道の先生とそのお社中の方たち。
子どもの半東では失礼ではなかったかと、気になってはいたのだけれど・・・。
今日、皆さんの作品をお届けに伺った義兄に、
「小さいお嬢さんにお手伝い頂いて・・・」とお誉めの言葉をいただき、ご褒美のいちごを言付け て下さったのだそうだ。
きれいに箱詰めされ、金色の紐をかけられた大粒のいちごは、輝く宝石のようにみずみずし く、誇らしげに見えた。
初めてのお茶室デビューをつとめたアユコへのご褒美にと、色鮮やかな果実を選んで下さった お客様の細やかなお心遣い。
贈り物上手な方だなぁ。
きっとアユコは初めての「半東」のつとめの緊張感とともに、色鮮やかないちごの甘い香りを一 緒に記憶にとどめておくことができるだろう。
「人をおもてなしする」と言う仕事の出発点に、みずみずしい果実の輝きをそえてくださったお 客様のやさしさに、子どもというのはいろんな人の手で育てていただいているのだなぁと改めて 思う。
「また、お客さんの時は言ってね。」
赤いいちごの勲章をつけて、アユコがまた胸を張ってお茶室のつとめを果たしてくれることだろ う。
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