月の輪通信 日々の想い
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2003年11月27日(木) 5年生陶芸教室

二日に渡る5年生の陶芸教室が終わった。

30人足らずの子ども達を3クラス。

一日目に茶わんと高台の形を作り、二日目に高台を着ける作業をする。

手づくね茶わんの一番基本的な作り方で、作業の手順はある程度決まっている。

同じだけの粘土を手にして、同じ説明を聞いて、同じ手順でこしらえるのに、本当に様々な作
品が仕上がってくるので、面白い。



今年はうちのアユコの在籍する学年なので知っている子もたくさんいて、「おばちゃ〜ん」とあち
こちで呼んでくれるので楽しかった。

先日の工房見学に続いて、今日は父さんの水引きロクロのデモンストレーションに子ども達の
興味が集中する。

見ていると簡単そうな茶碗作りも、何人かの子どもが実際に同じ作業をしてみて、その難しさを
実感する。

「ほほう・・・」と子供らが息を呑んで父さんの職人技に引き込まれていくのが判る。

後ろの方で、訳知り顔でその仕事ぶりを見ているアユコの表情も、少し得意そうで、少し恥ず
かしそうで、面白かった。



ここ何年か、同じ年齢の子達に同じお茶わん造りを教えていて、感じること。

ある程度まとまった指示を聞いて作業をするということが苦手な子どもが増えているのではな
いかと言うこと。

例えば三つ指示してもそのうちの一つか二つの事柄しか聞き取れない、従えない。

決して、話を聞いていないとか、反抗しているとかそういうのではなくて、聞いた話が「頭にひっ
かからない」という感じ。

「さっき説明してたでしょ。」と言ってもピンと来ない。最前列で興味津々でみてたのに・・・。

作品の出来映えがあやしくなってきて、「おばちゃ〜ん!」とSOSを出してきたのに、私が手ほ
どきしている手元に視線が合わない。

「ここよ、ここンとこをよく見てね。」

としつこく言って初めて、そこを見つめる。

「触らないで、そのままちょっと待ってね。触っちゃだめよ。」

と何度も言っているのにほんの数分が待てない。しまいには、「お手手は後ろでつないで、『待
て!』」と号令までかけてしまった。

「幼いなぁ・・・」と思うより先に、なんだか基本的なコミニュケーションの部分で欠落した物があ
るような、不思議な違和感におそわれる。

電波状態の悪い携帯電話でしゃべっているような微妙な距離感。

そういえば、先生方の指示の言葉も多くなったような印象を受ける。(もちろんクラスのカラーや
先生の指導法の違いもあるとは思うが・・・)

よく聞いていると、一人の子に同じ指示を数回繰り返していることが多い。

つまり、「一回で聞けない」子が増えているようなのだ。



決して多くの子ではない。

大概の子は、まとまった指示を理解して作業に生かせるし、言葉のやりとりにも距離感はな
い。

そして、指示が聞き取れない子も特別な子ではなくて、好奇心旺盛で人なつっこく、活発な子ど
も達だ。

「どこが変だっていうの?」と聞かれれば、「別に・・・」としか言えないのだけれど・・・



改めて、我が家の子ども達を振り返る。

「○○持ったの?」

「××しなさいよ。」

日常生活の中で口癖のように繰り返す指示の言葉。

その一つ一つを「一回で聞き取る」能力がちゃんと育っているだろうか。

誰かの言葉を心で受け取る訓練をちゃんと修得しているだろうか。

子ども達を取り巻く環境は日に日に複雑になり、たくさんの情報や新しい経験があふれるよう
に降り注ぐ。

その中の必要な物をしっかりと選んで確実に心に納める訓練は、やはり家庭で、日常の生活
の中で行われなくてはならないことなのだと改めて思う。




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