小説集
2004年09月14日(火) :
休息
今現在の気象データを入れているNATを見ながら、喫煙の許されている本部で伍長は煙草を吸っていた。隣にはこれまたNATの作業を見ながらお茶をすするヒトダマがいる
「なぁヒトダマ、お前ゆかた着たくなかったのか?」
ヒトダマはほにゃ?っと伍長を見た
「あのですね、浴衣を着ると、妙なくびれができてしまうので、それはどうかと…」
「いや、そうじゃなくて 元の姿で着たくなかったかって」
また、ほよ?っと体全体を傾けると、湯飲みをおいた
「えーとですねぇ…着たかった事は着たかったんですけどぉ…」
「着たかったんだな?」
別に伍長は怒っていた訳ではないのだが、どすが効いた声(元々)にヒトダマははっきりと答えた
「はい…」
垂れ目が細められ、伸びてきた手がヒトダマの前髪をワシワシとなでる。伍長は何か考えているようであった
「そうだな……七五三でもするか?NATも一緒に」
「七五三…ですか?でもあれは」
髪をなでていた手が背中に移り、ムニムニと揉み始めた。こそばゆさにヒトダマが身をよじる
「年なんざぁ関係ねェさ 俺が父親って事にしてよ」
「父親」と言う言葉にヒトダマは全身を傾けた
「伍長さん、父親というより誘拐犯に間違えられそうですぅ…」(9/14)
ぎゅ!っと背中がもにられると、ヒトダマから悲鳴ともつかない声と電気が走ったかのように下から上へ震えが伝う
「お前なぁ…」
「ご、ごめんなさぁい でも、いいんですか?」
「子供が心配するこたぁねえんだよ」
子供…といっても、見かけだけで ヒトダマは伍長の何倍…いや、何十倍もこの世に存在している。しかしそのファンシーな姿からは子ども扱いしてしまう方が、当然と言っては当然なのかもしれない
「ありがとうございますぅ」
伍長の手の中でヒトダマがぺこりと頭を下げた。伍長はヒトダマをイスに戻すと 空になった湯飲みを引き寄せる
「もう一杯飲むか?」
「はい、いただきますぅ。伍長さんが入れたお茶、すごぉくおいしいですねぇ(ほのぼの) あ、もしかして 料理も出来るんですか?」
「まぁ、喰える程度にな」
ヒトダマと自分の湯飲みにお茶を注ぐと、ヒトダマの前に置いた
「楽しみにしてますねぇ」
どうやらNATがセッティングを終わらせたらしく、こちらに来た。
さぁて、とつぶやいた伍長は 普段はあまり浮かべない普通の笑みをこぼしたいた
Fin(9/15)