小説集
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2004年09月10日(金) :
 

「ごめんなさいです ごめんなさいですぅ」
「あー 先に言わなかった俺が悪いんだ」
フランクをソファに寝かすと、伍長がするより先にデイブが水を飲ませ、怒ったような視線を伍長に向けた。
「わざとじゃないって」
「…アルがそんな事するとは思ってない」
 ――あ、デイブさんはじめてしゃべりましたねぇ
心配そうに二人の成り行きを見守っていると尻尾をつかまれた
「にょ〜〜〜!!」
「おもったとおり、いいねごごちぃ」
出来上がったミハエルがヒトダマを枕にしている…
「くすぐったいですぅ」
んな叫び声など酔っ払った人間に聞こえるわけもない
「ミハが眠るまで我慢してろ…」
やれやれと伍長がため息をつく。感触が良すぎてビーンズクッションと間違われているヒトダマだが、れっきとした女の子 ……んなこと考えるより寝るか
伍長もそろそろ限界が近かった
外を見ると空が白み始めている
眠ったミハエルの頭からヒトダマを引き抜くと、少し萎んでいる

今日はかなりもにられており、いつもはすぐに膨らむような凹みなのだがなかなか戻らない
「寝るぞ」
「あああ、それより先に片付けしたいですぅ」
「一度寝てスッキリしてからでいい!俺は眠みぃんだ」
有無を言わさず小脇に抱えるともがくヒトダマを連行する
と、デイブと視線が合った
  ――こ、怖いなんてものじゃないですぅ
ヒトダマの震えにか、それともデイブの視線にか 伍長は振り向いた
「デイブも一緒に寝るか?」




「だ・か・ら 何で火花が散ってなきゃいけねぇんだ?あ?」
ベットの上で伍長は叫んだ
ヒトダマとデイブが ぢー っと睨み合いを続けているのだが、伍長の言葉に二人は キッ と睨み付けた
「ヒト ダマ…」(こ、こえぇ 寝るに寝れねぇじゃねぇか)
ヒトダマにはいつも寝ているからいいじゃねぇかとか、デイブにはいい年こいて何張り合ってるとか言えなくなってしまった
  ――まさかデイブがやきもちやくとはなぁ… フランクにべったりとばかり思ってたんだが
ひょいとヒトダマをつまみあげる
「お前は俺の右側、デイブは左側 いいな?おやすみ」

うとうとしてきたなぁとまどろみはじめたヒトダマは急にもにゅりとつかまれ放り投げられてしまった
「???」
キョロキョロとまわりをみまわしてベットを見ると、デイブが伍長にくっついてヒトダマを見ていた
「ムムム 卑怯です」
パッとデイブの前にあらわれたヒトダマは、驚くデイブに頭突きをくらわせる
思ってもみなかった攻撃にあごをおさえ、涙目になったデイブの前でヒトダマはエヘンと胸をはる
「どーですか、これでおあいこ ほにゃぁ!!」
デイブがヒトダマのほおだと思われる辺りを左右に引っ張って手を放した
「あうぅ(泣)ムー そっちがその気なら」
………
ベットの上でギャァギャァピーピー喧嘩を始めたのだが
「うるせえ!黙りやがれっ
眼鏡が外れて本来の姿に戻ったヒトダマとタガが外れかけ金髪の姿に戻りかけたデイブがつかみあったままピタリと動きをとめた
ダース・ヴェイダーのテーマをBGMに伍長がゆらりと起き上がる
「アル ごめ…」「伍長さぁん あああの…」
必死の訴えは無視され、首根っこをつかまれた二人は床に放り出された
「静かにねれねぇんなら外で寝ろ!」
伍長の言葉に出来ない恐ろしさにおもわず二人は抱き合って震えをとめようとした。しかし、半分覚醒状態だった伍長はそれ以上何も言わずにパタンと倒れた
思わず顔を見合わせると、ヒトダマの頭に スコーン とメガネが投げつけられた
ため息をついて床に落ちメガネを拾ったデイブは、ヒトダマにメガネを渡すとクッションを枕にして横になる
「あのぉ、伍長さんの所に戻らないんですか?」
メガネをかけながらデイブに尋ねると、またにらまれる
「……アルが怒ったら、次に気持ちよく目が覚めるまで許してくれない
 今度はきっと 窓の外に放り出される」
身震いをしてヒトダマを見た
「…お前、吐きたいのか?青いぞ…」
「い、いえ リアルに想像しちゃいましたぁ」
何を思ったのか、デイブがヒトダマを掴んだ
「ああのぉ 私、マシュマロみたいにおいしくないですぅ」
「? …ほんとにいい感しょ く…」
言い終わらないうちにすやすやと寝息を立て始めたのだが…
「きついですぅ せっかくふくらんだのにぃ(泣)」
せめてもの救いはデイブさんが固体さんに似ていることですねぇ
本当に今日はとんでもない日でしたぁ
と、鳥の鳴き声を聞きながら ヒトダマも眠りの世界に入った


次の日、デイブの腕のなかで しおしおになったヒトダマが発見されたのは言うまでもないし、伍長とデイブ以外が二日酔いで動けなかったのも言うまでもない

The End







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Photo : Festina lente
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