ダーは麻雀友だちと飲みに出てしまっている。 ぜんぜんお腹空いてないのだけど 何か食べたくて 作るつもりもないので 近所のスーパーで半額惣菜うな丼を買った。
レジに新しく、お姉さんが入っていて 手首にタオル地のリストバンドをしているのを 見てしまった。
…なんで、「見てしまった」なのだろう・と一瞬 自問自答したが、 銀行員みたいなベスト&タイトスカート+シャツ・がここの制服なのだが ずいぶん制服と似合ってなかったのだ。
それ以上にそのリストバンドが 茶髪で地味なお姉さんに似合ってなくて あの切れ長のキツイ…というより影のある瞳、に、 あのリストバンドは[リスカバンド]なんじゃないか・とか妄想してしまった。 しかし、お姉さんは生きるためにレジに立っているのであって、 私が瞬時に描いた、 柔らかなタオル地の下の 生命を繋げるため塞がれた紅い傷跡は 空想でしかないのだった。
いろいろあるんだなあ・なんて詮索好きの心が検索をかける。 空腹でもないのに自分に流されて お弁当をしっかり食べてしまった。
食欲は何かを埋める。
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何処か色の強い世界…緑・茶色・グレー‥で、 何かを強く想い考えながら 歩いたり急いだりしている。
そんな夢を見た、 その色彩の強さ重さが体に残って、 濃密な夢の世界の感覚だけが余韻になっている。
さっきから鳴っている電話のベル音に いきなり引き上げられて、 私は暗い部屋で横たわったまま あいづちを打つのだった。 もう、夢の輪郭がどんどん薄れて行くのを感じて、 どんな夢だったか一生懸命思い出そうとしているのだけど 受話器から強制的に流れるママの声で遮られて その隙を突いて流れてゆく夢の余韻を捕まえる事ができない。
「おじいちゃんのン回忌を、もう33年もやってるからもうやめるんだって…」
毎年お坊さんを呼んでお経をあげてもらうのだけど お経をあげてもらうその時間に側に誰かが座ってる訳でないのだそうだ。台所に居たりするのだそうだ。その家がこれから立続けに娘達が高校に行くので、お金が足りないため やってられないらしい、のだそうだ。 なんとなくその行為の厚みというか薄さというか、そういうモノを感じた。 それは寂しい感じ。
「‥33年も「まじめに」やってるんだったら いいんじゃない? 大切なのはお経じゃなくてこころだと思うよ」 と、言ったけど あの家の誰かに“こころ”、というか“まごころ”みたいなのがあるのかイマイチ信憑性がない。だけど私だって薄情なものだから誰を咎める事もできない。「その日は 手を併せてあげたら・お墓参り行ってあげたら?」とか、言った。
だけど、
「でも、やめちゃったら おばあちゃん連れてかれたりしない?」 と、うっかり思った事を言ってしまった。これは嫌な予感だ。 よくない事を言ってしまった、と思った。
おばあちゃんはたぶん、もう そう長くない。 老人ホームで、…もう自分の意志で「言葉」を発する事もなく 笑うだけで横たわってどんどん小さくなってく、あの姿をちょっと思い出した。 おばあちゃんは若い時におじいちゃんを亡くした。 それから、ずっとずっとおじいちゃんの事を好きだったおばあちゃん。
「…でも、連れてかれても幸せかもね」
会いたい人に、やっと逢えるのなら。 とか、思った。
ママの友だちは演歌が好きだからテープに取った、それを遊びに来た ら聞かせてあげようと思う(ママは洋楽とクラシックしか聞かない)、 7年前の今日 アメリカに遊びに行った、あの時は…、、
私はいつもよりとても丁寧にあいづちを打っていて、 それはママをいつもより饒舌にしているのだった。
ママの話なんてどうでもいいんだけど なんか大事だと思ったから、あいづちしてる。
電話を切ったらたった10分の事だったのだけど とても長話をした感じがした。 今日の長話はぜんぜん嫌じゃなかった。
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すっかり忘れてたけど、おじいちゃんは 私が誕生した時には すでに亡くなっていて 白黒写真のなかで若いままの人で、 命日は12月28日です。
初めて聞いた時と同じに今日もハッとした。
その日は私にとって重要な友達の誕生日で、 私にとって12月28日は[命日]ではなくて[誕生日]なのです。
こんなお話し彼女には不名誉なのかしら、 でも何か不思議な巡り合わせ勝手に感じたりして。
これは、ありがとう。というお話なのかしら。とか思ったりして。
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こんどのパッケージは水墨画みたいな妙義山のイラストを使いたい、
という ダー会社の社長の希望で 昨日はなんちゃって水墨画を描いた。 そんなの描けと言われて描けるもんじゃないのだ。筆を執るまでに1週間程かかった。何か用意していた訳ではない…資料をそろえる位の事をしてただけ。ただ単に意気込みが足りなかったのだ。水墨画なんて奥の深いものを、生まれて初めて描いた私のイラストで間に合わせるなんて。見る人が観たら痛々しいだろうなあ…なんてどきどきしながら描いてた。
あのねえ、普通は作家さんとかPOP描きさんとかにお願いしてお金払って そういうイラストを用意するんですよ。
とか、内心思いながら書いてる。 私が描いた山は水墨画調で、甘い。未熟すぎるのだった。 用意がなくて、道具を揃えるお金もないから筆ペンと水だし。アマー。 本屋で水墨画雑誌やら初心者向けのガイド本を立ち読みしたけど、墨によって仕上がりが違うのだそうだ、「墨汁なんてもってのほか」です。と書かれていたが、その基準で行くと 私の書いたソレは最低だった。
乾かして、スキャニングして画像処理をすれば それなりに「らしく」なった。
文字を書いて取込んで、とカチャカチャやってたら 朝になってしまった。 全然疲れなかった。眠くもなかった。ちょっと充実していた。どんな要望であれ形であれ、ステージを貰えるというのは何とありがたい事だろうと思った。
ダーと朝御飯のお蕎麦を食べて、 ダーを見送って、眠った。
ダーにはプリントアウトしたものを渡した。 私が描いた妙義山…100均のらくがき帳のペラペラ紙に描かれている、と一緒に。 社長はこの『水墨画』の安っぽさを許してくれるだろうか。
許してほしい気持ちと、 許されたくない気持ちがはんぶんこ。
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午前11時すぎに起きた。 3時間程しか寝てないのに、たっぷり眠った感じがある。 最近、朝ちょっと眠る習慣がついてるのだけど 私はこの時間帯に眠っていれば、 ほんのちょっとの睡眠でも生きていけるんじゃないかと思った。 この「充実した睡眠が採れる3時間」は夜中であって欲しいと思った。
まわしておいた洗濯物を出して畳んで、2回めの洗濯物をまわす。 バナナと豆乳をミキサーでジュースにした。 ここんとこ毎朝ダーと私はこれを飲んでいる。
洗濯物を干してから、 ハナちゃんとターリンを洗った。 ナォ〜・という声が浴室に響く。
…それはそれは嫌な顔をされた。
夕方、webで応募したバイト面接の電話がかかって来て、来週約束をした。 「職歴とか作品とか拝見しました、しっかり仕事をなさっていたように 感じましたけど、お仕事の内容は(デザインではなくて)決まった手順で 行なっていく、どちらかというと“作業”です…」 私は、いま難しい事はしたくないのだった。
会社に属して・客の所へ出向いて・打ち合わせして・業者を手配して・見積もりを作って連絡とって顔色を伺って・資料を集めて・徹夜で商業デザインに明け暮れる、、、、そういう日々を迎えたい訳ではないのだ。 ときどき、こうやって自分の部屋で 私のもとにやってきた、お金にならない作業に力を注いで コツコツやってる方が幸せ。…もちろん、ああいう日々があるからこういう事もできるんだけど。
『お金を得るための仕事』は単純で、簡単で、拘束がないもの。 いまは、そういう気分。
来週の面接が楽しみ。
仕事内容より、 そういう職場にいる人との出会いの方が楽しみ。
夜 また眠ってしまって、 今度は夜の11時に目が覚めた。…というか、ママに起こされたんだけど。
なんか、私ってば12時間おきに睡眠とってる。
父長崎人+母福岡人=純血の九州オンナ、福岡に産まれ、
関東→京都→佐賀→京都→横浜→群馬と流れてます‥
レイ
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