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- 2002年01月20日(日) あたしの自慢
あたしの自慢は
腰まである、ふさふさの長い長い真っ黒な髪だった。
そんなたっぷりとした自分の髪の毛が大好きで
自分でみつ編みしたり、母に編み込みしてもらったり
そのままなにもしないで風になびかせてたりね
シャンプーする時は結構苦労したっけ
そんな大好きな大好きな髪とお別れする時が来た
白血病のガン細胞を殺すため、放射線を頭に浴びなくてはならなかった
5年生の夏休みの時、主治医が言った
「確実に髪は抜けるからね。」
・・・・
朝起きると長い髪が枕にべっとり並んでくっついている
白い枕が黒くなったみたいにね
辛すぎて涙を流すの忘れちゃった
ブラシでとかすと無限にすいついてくる
といてもといても終わらない
悲しくって悲しくって、
しらぬまに私はブラシをとかす手を止めていた
彼女はずっと見てきたんだと思う・・・
病気になったことの悔しさで
消灯時間に、頭から毛布をかぶって
涙がかれるほど泣いていた事を
友達に会えない恐ろしいほどの寂しさで
友達に追いつけない悔しさで
自分だけ違う苦しさで
自分自身と葛藤してるあたしを
あたしのせいじゃないのに
あたしは悪くないのに
なんであたしだけ?
なんであたしなの?
何万人の中の一人なんて
それがなんであたしなの?
母に聞こえないように
のどからわき上がりそうな声を
必死でこらえて
泣いていた事を
静寂の中の真っ暗闇の夜だもん
声がもれなくて良かったね
もし聞こえてたら
誰かに辛いって分かっちゃうかもしれないじゃん
次々と同室から退院して行く
となりの子達に
「おめでとう、お大事にね。」
そう言いながらも
ほんとは胸が細い糸でぐるぐる巻きにされたように締めつけられて
悔しくて、悲しくて、やるせなくて
自分に嘘をついていたって言う事を
研修医の下手くそな腕のせいで
あたしの手の甲の血管が
針でなんども刺されて
実験台にされて
紫色になっても
それでも 一言の文句も言えず
ずっと耐えていたって言う事を
きついきつい点滴治療
気持ち悪くて
もどしそうになるのを
じっとじっとこらえて
息をかみ殺して
動く事もできず
あんなにゆがんだ顔をしていた事を
彼女はずっとずっとずっと見てきたんだよ
そして全部知ってたんだよ
あたしの辛さも、あたしの苦しみも
あたしの大事な大事な髪
あたしの大好きな大好きな髪
あたしの大切な大切な髪
あたしの可愛い可愛い髪
あたしの自慢の立派な黒髪
全部抜けちゃった・・・
光にすかすと
金髪にすら見える
きれいな今のあたしの髪
ふわふわの髪
きれいな茶色に染まった
幼い私の髪
髪は戻ったけど
彼女は昔の彼女じゃないんだ
今の細い髪を5本束ねても
昔のあたしの黒髪にはかなわないくらい
細く やわらかくなっちゃった・・・
でもね、すっごく気に入ってるよ
みんなが
「似合うね〜。」
って言ってくれて嬉しいし
生まれ変わったみたいで新鮮な気分♪★♪
でもね・・・
ふと思うんだよね
もう1度
もう1度だけでも
あのコロの自慢の髪にもどったらいいな・・・ってね
そしたらいっぱいいっぱい
可愛がってあげられるのにな
みつ編みでも
よつ編みでもしてあげられるのにな。。。