視力が落ちた。 数字で言うと、「半分」に落ちた。半分って言うのは何か変だけど。 半分の数字だけど、半分しか見えない訳じゃない。 半分の視力なのに、汚いものや醜いものは以前と同じようによく見える。 半分の視力なので、綺麗なものが以前よりもボヤケて見える。 硝子越しでないと綺麗な景色も見えない。 硝子越しでないと綺麗な言葉も読めない。 硝子を隔てて私の中に入ってくる綺麗なものは、何となくよそよそしい。 何かを一枚纏って入ってくる。そして私に同化しない。 私はそれらを無理に同化させようとするので、前より余分に草臥れる。 こうして綺麗なものは次第に私から離れ、異化作用を受けて私とは違う何かになっていく。 汚いものばかりを映す濁った眼になるために、今日も一日窓の外を眺める事も出来ずに仕事をした。 せめて窓の外が眺められればいいのだけれど。 窓の外にも、あるのはビルばかりなのだけど。
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