diary/column “mayuge の視点
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「器(うつわ)」が料理を引き立てる

 新球団「楽天イーグルス」のホームフィールドとなる、宮城球場の改修工事が進んでいる。投じられる費用は約30億円だとか。球団のGMに就任したM・キーナート氏は「ディズニーランドのような球場」を目指しているという。ワクワクする球場という意味では、大いに結構だと思う。
 ところが、残念なニュースを耳にした。内外野ともに「人工芝」が張られるらしいのだ。正直、これにはがっかりした。ああ、「あの」感動は宮城にはないのかと。
 シアトルのセーフコフィールドに初めて行ったときのことだ。チケットのバーコードをピッとやってもらって(マーケティング上のデータベースとなるので、日本のような「もぎり」ではないのだ)、はやる気持ちを抑えながら階段を上がった。すると目に飛び込んできたのは、この世のものとは思えないような「荘厳な緑の空間」だった。これが総天然芝の球場か。全身が震えた。
 僕らはプロスポーツに、いろんなものを期待する。夢、感動、興奮、爽快感。これらはつまり、「非日常」ということなんだろうと僕は理解している。僕らは日常で様々な「現実」を目の当たりにする。その多くはため息とともにあったりする。旅行、映画、宝くじ――。おおよそ娯楽と名のつくものは、その「現実」からいっとき目を逸らして、非日常に身をゆだねるためにある。だから僕らは金を払うのだ。僕はシアトルで、その「非日常」を確かに感じた。少々大袈裟だが、この美しい芝生を見るためだけにお金を払ってもいいとさえ思った。
 そもそも自然の緑というのは人間に優しいものらしい。目が疲れた時には遠くの緑(木々)を見ると良いといわれるくらいだし、そういえば晴れた日のゴルフ場は歩くだけでも気持ちがいい(スコアが悪くても)。つまり球場という空間では、この「緑」が商売上の武器になりうるのだと僕は言いたい。
 もちろんプロ野球ファンの頭のなかには、緑に対して金を払うという感覚はないだろう。俺はプレーに金を払っている、漠然とそう思っているはずだ。当然、選手や監督は高いレベルのパフォーマンスを見せる義務がある。何故なら彼らは「プロ」なのだから。それはあくまで当然のこととしておきたい。「あの空間にまた身を置いてみたい」と思わせるには、空間の演出、つまり「緑」が重要な役割を握っていると僕は思うのだ。
 前述の楽天GMは、球場に併設して「公園」をつくろうとしているらしい。しかし果たして、隣に公園があるから、遊園地があるからという理由で、野球を観に行くだろうか。とあるテレビ番組で「プロ野球の観客を増やすにはどうしたらよいか」と問われたつんく♂氏が、「ハロプロのコンサートをやったらどうか」というような話をしていた。試合の間にアイドルが歌を歌うからといって、野球ファンは球場に通い続けるのか。そういうことじゃないだろうと嘆かわしくなる。「球場という空間で野球を楽しむ」ということに最大限の魅力を感じてもらわなければ、ファンの足が球場に向かい続けることはない。
 この「球場という空間で野球を楽しむ」ことの一つの要素として、天然芝がいま潜在的に求められている気がする。今はもう人工芝を見てワクワクする時代ではない。

2004年12月07日(火)

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