お茶の間 de 映画
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2004年11月26日(金) 「ティコ・ムーン」奇病に苦しむ月の独裁者一族の暗殺を巡り、記憶を無くした反乱軍の英雄、謎の美女と渋いおじさんが華麗に暗躍する。

『ティコ・ムーン』【TYKHO MOON(名前です)】1997年・フランス=ドイツ=イタリア
監督・原案・脚本:エンキ・ビラル
撮影:エリック・ゴーティエ Eric Gautier
音楽:ゴラン・ヴォイヴォダ
主題歌:ブリジット・バルドー“Mr.Sun”
 
出演:ジュリー・デルピー(レナ)
ヨハン・レイセン(アニクスト、ティコ・ムーン)
リシャール・ボーランジェ(グレンバール)
ミシェル・ピッコリ(月の支配者、マクビー)
マリー・ラフォレ(マクビーの妻、エヴァ)
フレデリック・ゴーニー(マクビーの末息子、コンスタンチン)
ヤン・コレット(マクビーの双子の息子、アルヴイン/エドワード)
ジャン=ルイ・トランティニャン(マクビーの主治医)

ストーリー用ライン


いつとはわからない、きっとはるか未来の、ここは月。
独裁者マクビーが支配しているが、政治に意味などなく、
人々は無気力だ。

フランス語が標準語で、英語は禁止されている。
どことなく昔のパリの面影と中東の雰囲気がミクスチャーされた不思議な街並み。
街といっても、絶え間なく降り積もる白い砂で何もかも真っ白。

かつては盛んだった独裁者打倒闘争で、街並は破壊され、エッフェル塔@月 も半分欠けている・・・。

だが、革命を粛清したとはいえ、独裁者マクビーは安穏と日々を過ごしているわけではなかった。

マクビー一族は細胞を破壊される奇病に冒されていた。
首筋に水色の大きな痣。
マクビーにも、自分の双子の弟にも、双子の息子にも痣がある。
ないのは、妻のエヴァと、まだ若い末息子のコンスタンチンだけ。

マクビーは死を恐れ、永遠に生きられる方法を模索していた。
今は、ブタの内臓を定期的に移植してどうにか生きながらえているのだが・・・・。

マクビーを苛立たせているのは、病だけではなかった。
20年前に死んだはずの反乱分子のリーダー、ティコ・ムーンの
自伝が闇で出版され、ベストセラーになっているのだ。

ティコ・ムーンは、20年前に捕らえ、そのタフな脳細胞と神経と臓器を、すべてマクビーに移植する手術の途中、病院が火事になり、そのままティコ・ムーンは姿をくらましたのだった・・・。

いや、生きているかどうかはわからない。本は第三者の手によるものかもしれない・・・。
とにかく、わずかでも生きている可能性があるならば、完璧に適合するドナーであるティコ・ムーンを、再び捕らえ、今度こそ手術で細胞をいただき、自分は170年間、冬眠する、それがマクビーの狙いだ。

かくして、月の住民すべて(400万人いる成人男性のみ)に、
耳から採血検査を行いティコ・ムーン探しが始まった。

当のティコ・ムーンはといえば、20年前に手術で脳をいじられかけたせいで記憶を失い、今は彫刻家アニクストとしてひっそりと孤独に暮らしていた・・・・。


さて、マクビーの独裁を、地球も見過ごしているわけではない。
新国連は、2名の暗殺者を月に送り込み、マクビー一族の命を絶つよう命じる。

マクビーの双子の息子たちが統括する秘密警察の力をもってしても、殺し屋は1名しか始末できず、次々とマクビー家の者が
殺されてゆく・・・。

1人目の殺し屋を片づけたのは、謎めいた真っ赤な髪の美女、レナ。彼女はティコ・ムーンに接近する。目的はティコの暗殺なのか?彼女の正体は・・・??

そしてもう1人、謎めいた男がティコ・ムーンに接触してきた。
自称、アメリカ人ジャーナリスト、グレンバール。
どうやら彼はティコを守ろうとしているようなのだが、理由、所属は謎だ・・・・。

マクビーの末息子、コンスタンチンは、苦悩していた。
自分だけ、青い痣がない。それは、奇病の発病を恐れなくてよいという安心材料にはならなかった。
いつ痣が出る・・?今日か?明日か?毎日鏡をおそるおそる見る。
いや、あるいは、自分は本当はマクビーの子ではないのでは・・・?自分の父はもしや、ティコ・ムーンでは・・・?

記憶の戻らないまま、マクビーの野望に立ち向かうティコ・ムーン。
ティコの生きる原動力は、ただひたすらに、愛するレナを守りたい、その一念に貫かれていた・・・・。


楽天では売り切れです。
アマゾン他でDVDは入手可能。
中古ビデオはここで購入可能(1980円)
ビデオパッケージが見られます。
私はレンタルビデオで鑑賞しました。

コメント用ライン


ん〜〜w 固ゆで卵じゃなくてハードボイルドぉ。

色彩がまずツボ。青いトカゲ(ブルーイグアナ・・?)、
鮮血のような紅い髪、白い街、トリコロ〜〜ル!

粘着質な感じのするアメーバ状の水色の痣というかシミ。
「君の静脈が好きだ」←こんな口説き文句初めて聞いたぞ

ガタカでもそうだったけど、宇宙船だけど宇宙は描かれないという
お金かけないSF!
丸窓の外に地球と月面がちょびっと見えているだけで、
ここは宇宙船の中でぃすw と無理矢理納得させる力業!(笑)

フランス語以外を喋ると身に危険が及ぶっちゅー設定!
でも住民はなんか中東っぽいのも無国籍風を無理矢理醸し出していてとれびあん。
無国籍モノに不可欠なアジア要素はっちゅーと、日本酒飲んでます。娼婦はチャイナ服です。
さすが、おふらんすSFざぁます、とれびあぁぁぁぁぁ〜〜ん。

とにかく、ジュリー・デルビーの美しさがたまりません。
トイレの花子さんみたいな黒髪おかっぱから、真っ赤なボブ鬘、
そして恐らく地毛の眩しいブロンドまで披露してくれます。

そして主人公のティコ・ムーンを圧倒的に抜く存在感の、
渋いリシャール・ボーランジェおぢさま・・・・。

この麗しい2人の会話がまた凄いよ。
「ひとを殺す作家はきらいよ」
「恋する娼婦は嫌いだ」

シビれます。

マリー・ラフォレはなんだかクレオパトラっぽくて妖艶ですし、
かの名優ジャン=ルイ・トランティニャンがポコっとご出演していたりもします。

そうかと思うと、砂漠のガソリンスタンドの婆さんのど根性っぷりを笑うコミカルな要素もあり。

ストーリーはこの際、いいのです。
無重力制御装置もいい加減、ゆで卵はふわっと浮くのに
紙はバサっと落ちるとか、水と空気はどこから持ってきた?
とか、どーでもいいです、気にしません(笑)

でも、この映画、視覚的な部分だけじゃなくて、私のツボをつく
部分が他にもある。
またしても「記憶」です。

今まで、他のSF映画で「記憶こそがアイデンティティーである」
ということを話題にとりあげてきました。
SFの主人公はどういうわけかやたらと記憶喪失です(爆)

「ダークシティ」では記憶のない自分が、存在しているかどうかもあやしく主人公は不安になります。

「JM」では、失われた記憶にはあまり興味がない主人公ですが、
幼少時の記憶に僅かながら郷愁を感じています。
それを犠牲にしてこの仕事を得ている主人公を、ヒロインは
ヘンだと思います。
そして彼は、これから先、記憶できなくなることを激しく恐れます。

「ティコ・ムーン」の主人公。
ぜんっっっっぜん、記憶に執着しません。それはもう、潔いほど。

“人は歴史や記憶にしがみつく。
自分を知れば、他のことがすべて知りたくなってしまう。
だから記憶なんて興味ないのさ、今を生きたいんだ”

で、伝記をポイッ。

おおお、と思ったのですよ。
うだうだしてない。嗚呼、ハードボイルド。漢だねぇ、兄さん。

でも、オンナは記憶に生きるいきものなのです。
エヴァは、ティコが自分を覚えていてくれた、否、思い出してくれたことに感動します。
恋の記憶は、「思ひ出」となり永遠に消えずひたすらに美しい。

ああ、やっぱりこういうトコがおふらんす映画の美点だわ。
SFなのに妙に古き良き香りがするんだよ・・・。


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