股・戯れ言
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男たちのSATSUMA 下

サブカルとトラディショナルのクロスオーバー!ミクスチャー!ハイブリッド!でおなじみの岩手の日本酒酒蔵・喜久盛の純米大吟醸酒「電気菩薩」を新宿で呑める店ができましたよ。
店の名前は「たちばな診療室」。
場所は新宿ゴールデン街のど真ん中であります。
ナースの格好をしたねえさんたちが日替わりでママを勤める店です。ナースっつても風俗店ではないし、ねえさんたちは百戦錬磨の強者ばかりなんで女性がひとりで行っても楽しいお店です。新宿で飲む際には是非足を運んでいただきたい。きっと店にも酒にもエレクトリック・ショックを受けることでしょう。

たちばな診療室
http://www.tachibana-mari.net/top.html
喜久盛
http://kikuzakari.jp/



喜久盛の藤村さんは坊主頭に総合格闘技ボディ、そしてなぜか赤犬のステージにふんどし姿で登場したり、ふんどし姿でDJしたりする方なんですが(どんだけふんどし好きなんだ)、その日本男児マッチョ姿が禁色や仮面の告白な有名作家を彷彿とさせます。それを見込まれて、かの有名作家役のオファーがあるとかないとか。
ちなみにたちばな診療室の火曜日・金曜日担当ナースである春咲小紅せんぱいは多才なねえさんでありますよ。酒場のママ以外にも文筆活動やらバンド活動やらSMショーっつうか大道芸活動やらをやっておられます。すべての活動に意欲的でエネルギッシュで大変素敵な女性なのです。
ま、マンコス(バンド)の時はけっこう仮面のコスプレでベース弾いているがな。
そして私はこないだライブ中におっぴろげアタック食らったけどな。



さて、一週間あいちゃったけどかごんま話続き。長いよ。覚悟してくれ。


夜は呑みに行きました。出張の定番であります。
熊本に行った時も宮崎に行った時も大分に行った時も思ったことなんだが、九州の飲み屋街はでかい。どこも必ず東北一の繁華街・国分町以上の規模。鹿児島の繁華街・天文館も例に漏れず国分町以上にでかかった。
どこに行ってもまーいいやーと思って入った一軒目は名前失念。
きびなごも黒豚もたいそううまかった。
しかしそれ以上に私の心を捉えて離さなかったのは、
私は「ミス・練り物」でありますからね、もうおわかりでしょうね。

練り物の最高峰・さつま揚げ!

かまぼこも大好きなんだが、やはり練り物最高峰はさつま揚げだと思うのですよ。
ここの店のさつま揚げは自家製だったんだけど、これが本当に旨かったのです。すり身は勿論のこと、中に入っていた海老がぷりぷりでたまらんかった。
ああ、もうね、毎回言ってるけど
「小倉とマーガリンを合体させた人」
「抹茶と牛乳を合わせて初めて飲んでみることにした人」
「練り物を発明した人」
はノーベル賞受賞していいと思うんだ。ノーベルはもらえないかもしれないが、ヤツザキ賞はあげてもいいよ。しょぼいけど。
焼酎は地元でよく飲まれているというやつばかり飲んでました。これも名前失念。なんでこんなに忘れてんのよ。ここ最近の記憶力エラーの多さには自分でもびっくりだ。


その後、歩いているうちにジャズバーを発見。
Bluesy Tavernという店でありました。
引き寄せられるように入店してみる。壁にアルバートアイラーのジャケットなどが貼ってあるので「サン・ラーとかもあるんですか?」とマスターにお尋ねしたところそれはないとのこと。残念!つーか私、フリージャズ以外あんま知らんのだよな。よくないことだ。と、いうわけで、ドン・チェリーのアルバムをかけてもらう。
実はドン・チェリー、ちゃんと聴いたことがなかったんだけどなんともかっこいいですな。アヴァンギャルドというよりも正統派なビバップの匂いを感じました。
どっちにせよジャズってのは己の内側の狂気を音という形でいかに近似値として放出するかの表現方法だと思うんだけど、ドン・チェリーのトランペットの音は音量も旋律もすべてが規格外、というかほかで聴いたことのない音だ。
そこから推し量ることができる内面の狂気・熱狂の渦は凄まじいものなのだろう。
それは彼の生命力そのものであり、また、自分が生きていることに真っ向から向き合わなければこんな風に音を鳴らすことなんかできやしない。ジャズってのはそういうものだと私は思う。生命の匂いに満ちた音楽。生命そのものかもしれない。
もはやアヴァンギャルドとかビバップだとか言うことすらためらわれるなあ。
どのジャンルだろうと、偉大なるジャズメンてのは皆、己の命を、魂を、肉体を、衝動を音楽というフィールドで燃え尽きるまで表現している人たちだ。
そして、そういう音楽を聴くと触発されるのですよ。
魂が震えるのですよ。血湧き肉踊るとはまさにこのこと。

バーボンソーダを立て続けに飲みながら、痺れた頭でケルアックの小説のことを思い出した。
ロック一本槍だった私がジャズに興味を持った一因に少なからずケルアックの小説があるのです。「路上」はもちろんのこと、「地下室の人びと」におけるジャズメンたちの演奏は熱狂が強力なウイルスのように伝染し、汗と熱気が充満するライブハウスの雰囲気が読んでいるこっちにまで伝わってきた。私はビートニクなんて殆どわからない人間だが、文章を読んでいて音楽が聞こえてきたり、その音楽が鳴っている空間の熱狂の渦を感じたりするのは初めての経験であったのです。
そしてケルアックの小説には、とにかく登場人物すべてに強烈な嫉妬を覚えたものだ。どこかに行かなきゃ、動かなきゃ、一つの場所にとどまっていては見えるもんも見えなくなるぞと思わされた。

よく考えてみると、いつだってそうなのだ。
私を突き動かすのは「こんなところにとどまっていてはいけない」「どこかに行かなきゃ、こんなところにいる場合ではないよ」「果たして今私は、自分の生命とどれだけ向き合っているのか」という思いなんだ。
私の心を刺激するのは、「どこかに行き続けている人間」であり、「今、この瞬間にも己の生命を燃やし続けている人間」およびその人間の行動なんだ。
それは自分探しなどではない。自分なんてもともとあるんである。その輪郭をはっきり、くっきりとしたものにしたくて、旅を続けるんである。輪郭を広げたいのだ。つまり、世界を広げたいのである。

なーんて書いてるけどまあ、旅先は国内ばかりですがね。それも行き当たりばったりな出張ばかりだけど。でも、それでもかまわない。何かの縁で、ほんのきっかけで辿り着いたところが壮大な世界の入り口だったりするからな。
今まで行くと思っていなかったような鹿児島。大音量でジャズを聴かせてくれるこの店にいて、まるで「路上」の一員になったかのような気がしていた。
「路上」の一員なんて生ぬるい。
これは、私の「路上」の一場面なのだ。

いろいろとレコードを大音量でかけてくださって、なおかつお話もしてくださった男前マスターが最後に、「このアルバムを聴くといいですよ」と教えてくれた。
セシル・テイラーの「ジャズ・アドヴァンス」でした。
また新しい世界の入り口に立ったんだな私は。




翌日
10時にホテルをチェックアウト。
飛行機の時間は午後4時過ぎであったので、時間は十分あるようだが実はない。
なぜならば市街地から空港まで約1時間であるから。遠いなー。まあ、これが普通であって、那覇や福岡が例外なんである。宮崎も近かったっけ。大分もホバークラフトで30分弱だったしな。
昨日とは打って変わって快晴の日曜日。
鹿児島でやりたいことが山ほどあって迷う。
だってさ!鹿児島中央駅が目の前にあるということは!
九州新幹線に乗れる
ということなんですよ!
これに乗ったら私は国内新幹線制覇なのだ。九州新幹線は新八代−鹿児島中央間しか走っていないので今までは諦めてきたのだが、目の前にお宝があるなんて!素晴らしい。素晴らしすぎる。
しかし新幹線乗ってどっかに行ってしまったら帰りの飛行機に間に合わない罠。
どうしよう、と思いながら路面電車に揺られていると、でっかい銅像が見えた。駅に着いたところにも銅像がわらわらと建っている。
そうなんだよ、鹿児島は維新志士の里なんだよなー
そのへんも見たいんですよ実は。私は新撰組だの戦国武将だのは全然興味がないんだが、薩摩藩の明治維新の功績とか遍歴はちょっと好きなのだ。なんでかというとかつて、なけなしの忍耐力をもって「翔ぶが如く」を読んだことがあったからなのです。っても途中で挫折したんだけど。長すぎて。
日本の革命といえばやっぱり明治維新だと思うのです。旧体制を打ち破り、次のステージに向かっていった転換期のパワーというか生命力に、畏敬の念を抱かずにはいられないのよ。まあ、その後日本は訳がわからない方向に転がっていってしまったわけだが。


というわけで、新幹線よりも「維新ふるさと館」を選びました。

資料館は、明治維新のきっかけから維新後に至るまでの展示が中心でありました。
今は亡き人びとばかりなんで、もちろん生涯にわたる功績が展示されているんだが、
鹿児島という首都からも遠く離れた場所で、下級武士や百姓らのせがれ、つまり若者たちが絶望したり、このままじゃいけないと思ったり、実際に世の中動かそうという思いに突き動かされて行動をしたという事実に私はどうしても着眼してしまう。
あまりにも等身大に思えるのだ。
特別な人間だけが起こしたことじゃないからな。
テレビや街頭でじじいの政治家が「日本を変える!」って言ってても即座にウソだと思ってしまうけど、彼らの「どうにかしなきゃ」「なんとかしなきゃ」「変えなきゃ」は信用できる。本当にそう思ったんだろうというのもわかる。
それが、薩摩だけでなく長州だとか土佐だとか、各地で湧き起こって、ひとつの大きなうねりになったっていうのが凄いよなあ。まさにムーブメントだ。若者らが偉い人になってしまった後も実は重要なんだけど、そっちはあんまり魅力的ではないんだよな。身勝手ですが。

資料館を出ると、川沿いをのろのろと歩く。
天気がよくて気持ちいい。川面がキラキラしていて、川岸には青々とした木が立ち並んでいる。すがすがしい。川の流れの向こうに大きな山が見えて、あれが桜島なのかと思うと感慨もひとしお。ああ、俺、今とても維新志士な気分・・・泣こよっかひっ翔べと叫びたくなるような気分だ(鹿児島弁全然わからんが)
・・・しかしそんな気分はすぐに終了。
川岸で20人くらいのおじちゃんおばちゃんが焼肉パーティをしていたんであたり一面肉の匂いが物凄かった。


実は維新館を出た後は温泉に入ろうと思っていたんだが(鹿児島市内は温泉の宝庫)、川のずっと向こうに見えた桜島に惹かれて海まで歩くことにする。私は本当に地方を歩くのが好きなのだ。
歩きがてらコンビニを見つけるたびに入店して、どうにかマンハッタンを購入しようとしたんだが見つからん。何故だ!大分では結構見かけた気がするのに。
足掛け7店は入ったがゼロ。歩いているうちに海まで辿り着いてしまったよ。
今度こそ本当の「泣こよっかひっ翔べ」気分になるのか!?


今度も無理でした。
鹿児島港、無骨な港を想像していたのにおしゃれなモール街があるでやんの。アウトレットのようなやつ。家族連れとヤンキーカップル(男は何故か皆セカンドバッグ)に溢れていた。
いやじゃーこんなフレームの桜島いやじゃー
しかも風強すぎ。1分で鹿児島港を去る。


途中山形屋でさつま揚げを買いながらてくてくと歩いて駅に向かうと、なんとまあ、人気のない交差点近くで中古レコード屋があったのでした。
これだから歩くのが好きさ。
レコードをいろいろと物色するが、いかんせんレコードなんで持ち帰りが面倒くさくなるんで買うのはヤメ。しかしこの店で30分近く使ってしまった。
なんでレコード屋って隅から隅まで見たくなってしまうんだよ!
温泉はもうムリだ。

でもね、温泉諦めてもね、まだ昼飯を食っていないんだよ
どうにか食わなきゃいかんのだよ

鹿児島はラーメンがなかなか旨いらしいという話は聞いていたのでどうにかラーメンを食わねば、と最後の悪あがきでラーメン屋を探し始めたが、なんでなのかな、こういうのって探し出すとなかなか見つからないものであるね。
見つからないまま駅のほうまで戻ってきてしまう。
駅の程近くに大久保利通のでかでかとした銅像が建っていて、「大久保はん、ラーメンとマンハッタンは何処なんだよ・・・」とつい恨めしげに見上げてしまう。
関係ないが、大久保利通はハンサムですね。髭具合が。




駅前まで戻ったらラーメン屋はあっさりあったのだった。
そして駅前のダイエーでマンハッタンもあっさり見つかったのだった。
今まで歩いたのはなんだったの?

バスの時間が迫っていたので、大急ぎでラーメン食ってマンハッタン買ってバスに乗車。なんとか間に合った。そして空港でまたさつま揚げを買うのだった。
どんだけさつま揚げ好きなんだ。

ちなみに、バス内で隣に座っていた人が、そんなに歳を召しているわけでもないのにセカンドバッグを持ってました。前日のジャズバーでもセカンドバッグ持った人見ました。天文館でのセカンドバッグ率は半端なかったです。
鹿児島はセカンドバッグ天国なのかー。

そして帰りの飛行機搭乗口でやたらメートル上がっている人たちがいるんで
なんだなんだと思ったら、行きの飛行機に乗っていて土方軍団でした。
・・・・。


土方に始まり、土方に終わる鹿児島旅。
おかしいなー、私の「路上」はケルアックのそれとは大違いだなー
まあ、日本の道は「国道」「県道」でその路上は「ドライブイン」と「(ヤンキーの溜まり場である)コンビニ」だからな。
これぞ日本のリアリズム。
でもBGMは長渕にはしねえぜ。私の血肉を湧き躍らせてくれるジャズやロックにさせてくれ。
2006年04月24日(月)

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