ミヤザキマサコ 前編 |
今さっき「移動がものすごく好きな人って狩猟民族なんだって」と言われたので私はおそらく狩猟民族なんでしょう。 男狩り・・・!ってそれはヤマジュンだけど。 狩猟民族としては、誕生日にはるばる南九州は宮崎まで行けるなんて、もうこれ以上ないプレゼント。 女、ヤツザキマサコ、26歳の旅立ちを南九州で迎えられるとは思っても見ませんでした。この調子で今年も諸国漫遊(出張だけど)したいと思う所存。 今年は酒で失敗しないようにしたいと固く思うのです。
出発に備えて、奥田英朗の新作「ララピポ」を購入。 いやー奥田英朗はホントにおもしろい。 そういや7月に岡山行った時も機内で「サウスバウンド」を貪るように読んでいたんだった。 そういや去年11月に福島の漁村に行った時は「邪魔」を一気読みしたんだった。 で、秋田で「最悪」を読んで大阪ン時は「イン・ザ・プール」読んで・・・ああ、奥田英朗の小説は旅の友。 なんつっても複数の人間が同時に動き回って、おのおのが接触しあったり、通り過ぎたり、重なり合ったりという臨場感がいい。今で言うと「24」みたいって表現になるんでしょうか。昔見た「ショートカッツ」って映画が一番近い感じだと思うのだけど。 この「ララピポ」はどうしようもなくて救いようのない、また未来もない人たちばかりの話で、登場人物が魅力ゼロ、むしろマイナスなのがいい。奥田英朗の小説は、意味のわからない自信に満ちている人の頭の中を描いている時が一番光っている、と私は思っているのだけれど。 あ、「サウスバウンド」は結構希望のある話でそれはそれでおもしろいです。何よりも八重山に行きたくなることこの上なし。 http://www.walkerplus.com/tokyo/20050705/bo1917_pkup.html
あ、八重山ではなく宮崎の話だった。 スカイネットアジア航空やJALでいけばそれなりに便もあったみたいなんだが、目下ANAでマイレージ貯め中なんで便少な彦なANAで。 朝の便が終わったら次の便は夕方なのもあってか満席。「便を次の便に変えていただけるお客様、謝礼金として1万円お支払いいたしますー」というアナウンスが何度も流れた。喜んで協力させてクレー、と思ったが、次の便に変更してしまったら仕事に間に合わない。一万円獲得ならず。 先述の「ララピポ」を読んでいるうちに宮崎到着。 東京も天気が悪かったが、宮崎も曇天模様。どんより。でも10月なのに空気が生ぬるくてじめじめしている。 ここは常梅雨の国なのか。 梅雨っぽい空気ではあるものの、かろうじてまだ雨は降っていなかった。どんよりどよどよした空の下にこれでもか!というほどソテツが立ち並んでいる。 南国アピールぶり、必死だな。でも曇天模様にソテツは似合わない。なんだか寂しい。このソテツたちは台風が来た時にはびゅんびゅん撓ったことだろう。逞しいがやっぱり寂しい。
宮崎空港が珍しいのは、すぐそばまで電車が伸びていること。今まで降り立った地方空港は、ほぼ100%「中心街に行くにはバスに乗らなければいけない」ところだった。そうじゃないところも沢山あって私が知らないだけなのかもしれないが。なので今回は空港から宮崎まで電車でGO! あ、そういえばJR九州を利用するのは初めてだわ。 と思ってホームに行くと、いきなり出迎えてくれたのが特急車両。 うわーこれは! にちりん!真っ赤っ赤! しまった、特急きっぷ買ってねーや!急いで買いなおそうか?と激しく動揺するが、これは単に宮崎空港〜宮崎区間を特急車両を使って運行しているだけらしい。 すなわちローカル線扱い。 でもローカル線なのに一番前の車両は喫煙車両だからね。さすがだ。 後ろ向きのまま発車。秋田新幹線やワイドビューふじかわを彷彿とさせる。 車窓からの風景は民家大目。でもところどころにソテツが生えていて、南国を標榜しているのに庶民的リアリズムなのがミスマッチでおかしい。 3駅ほどで宮崎駅到着。
宮崎駅前も過剰にソテツが植えられておりました。 常梅雨じゃないな、もはや。常蘇鉄の国といった方がいいかもしれない。季節じゃないが。 駅でお客さん(秋田や沖縄も一緒に行ってしこたま飲んだ人)と落ち合って昼食。 宮崎名物のもんを食いに行くのか思いきやオムライス屋へ。お客さん曰く「チキン南蛮はおいしくなかった」そうで。私の中のチキン南蛮のイメージは「ベントマン」なんだけどな。 お客さんは奄美大島から宮崎入りしたそうで、奄美の酒がいかに美味かったかを力説していらっしゃった。宮崎にはあまり期待していないらしい。そりゃー南の島のほうがいいだろうよ。
お客さんといったん別れて宿に向かう。向かった瞬間から曇り空からぱらぱらと雫が落ちてきてなんじゃーと思ってたら一瞬にして大雨に。 シャワーの一番強いやつのように打ちつけてくる。 これは大雨ではない。立派な集中豪雨だ。 無論、ずぶ濡れ。 かろうじて傘は購入したものの、傘さしている意味ナッシング。いったんタクシー乗車を拒否られたほど。それでもなんとか宿につく。が、まだチェックインできない。荷物だけ預けて再び出たらタクシーが今度は全然来ない。 大淀川という川のほとりの宿であったので、大淀川を望む位置にビニールテントのあずま家(ルンペン住宅ではなく観光客用なんだろう)が立ち並んでいた。そこでタクシーを待つ。 あたり一面雨の音しかしない。車が走る国道がすぐ先に走っているはずなのに、激しい雨の音にすべてかき消されてしまっているのだった。 目の前の雄大な川も雨で青銅色に濁っている。 やっぱり宮崎、常梅雨の国。常露と書いたらちょっとかっこいい。 台風14号の被害がいまだ甚大だというのにこんな雨が降ってたらたまらんな。
そんなこんなで作業へ 作業自体は滞りありつつ、でもまあ、とにかく無事終了
再び宿へ。 宿は「たまゆら温泉」というのが出ているところでございました。 大淀川に夕日が落ちる瞬間を眺めるのがいいらしいのだが、外は絶望的なほどの雨。夕日なんか見られやしねぇ。あと「たまゆら」という川端康成の朝の連続テレビ小説(川端康成ってこういうのも書く人だったのか、橋田壽賀子と並んでるな)があったそうな。 それは40年前のこと。主演が笠智衆だもんなー。そして扇千影まで出てら。 このドラマのブレイクで宮崎は観光地として賑わったらしいのだが・・・それも遥か昔のこと。なんだか切ない。栄あれば衰えあり。 しかし温泉はなかなかのもんでした。 時間帯がよかったのか、内風呂も露天風呂もひとり貸し切り状態。 このお湯に入ると、私の気のせいでないのだとしたら、肌がつるつるになった。 嘗めるとしょっぱいのでこりゃー塩素かよ、と思ったら弱アルカリ性ナトリウム塩化物温泉だそうで、別に塩素ではないらしい。 宮崎いいところ。川端康成でなくとも2週間くらい滞在したくなるわな。
余談だが私が滞在したホテルは「文芸道場九州大会」の会場だったようで、高校生がうじゃうじゃ。文芸道場?つーことは文芸部寄り集まりの会なのか? なんだか非常に「詩のボクシング」臭がするな。
そして夜。 宮崎といえば地鶏だそうで。実は私はあまり知らなかった。 お客さんが「丸万て店が有名らしいよ」つーので行ったら、いきなり「一本でいいですかね」といわれてびっくり。メニューないのか。わけのわからないまま、「はあ、じゃあそれで」と注文すると「レアのほうがおすすめなんで〜」と表面だけが焼けて中は赤身の鶏肉が目の前にどーん。 なんだか知らないが豪快だ。 で、食ってみる。美味! 地鶏de誕生日てのはなかなかオツだ。しかも一本食べたらそれだけでお腹にたまるのね。その店は鶏だけで終了。 焼酎を飲みたかったが、ビールに鶏だけで十分であった。
宮崎の繁華街、通称「ニシタチ」は結構でかいのな。酒で潤っている街なんだなと思う。規模でいえば国分町レベルであった。 飲み屋街と風俗街が直結しているので、地鶏の店のほど近くにソープが普通にある。「ソープランド 現代」ってすごいネーミング。 裏道のほうを歩いていって、この店よさそうじゃないですか、と小料理屋「ひぜん屋」というところが2軒目。なぜ宮崎で肥前?と思ったら女将さんが長崎の方なんだそうだ。 ついに焼酎とご対面、否、対決。 私は芋焼酎の、消毒液のようなにおいのキツさが苦手なのです。 宮崎で焼酎を飲まないわけにはいかんだろうよ、と思いながらも霧島をロックで頼んだ時点では不安な気持ちがよぎった。 運ばれてきた焼酎がロックなのに大きいコップになみなみと注がれていたのを見たときもクラクラした。 大丈夫なのか・・・飲めんのかー!
しかし実際に飲んでみたところ、霧島、案外においキツくないのですな。 聞けば霧島は霧島でも、有名な「黒霧島」ではなく「白霧島」だったのでした。 すなわち度数が20度とやや低め。焼酎、イケるじゃねーか!楽勝、楽勝! と、意気揚々と「たちばな」 これもクセがない。むしろウマい。焼酎ブームには乗らなかったが焼酎っていいもんなんだなあ!と見直す。
しかし、三杯目の「木挽」
これが難敵であった。 モロに消毒液のにおい。 ほんとに焼酎が好きな人が飲む焼酎。 一面クリボー、二面ノコノコと順調に倒していったのにいきなりクッパ大王が現われたかのようだ。 宮崎の街角でもこの「木挽」の看板をよく見かけたから、地元の支持率は相当高いのだろう。これはギブアップしかけた。女将さんイチオシの「春雨サラダ」をもりもり食べて口直しの連続。 焼酎は全然楽勝ではないのな。甘かった・・・
木挽を異常に時間をかけて飲み干した後は「庄三郎」 木挽の後だけにクセがなく感じられる。ありがたや。 でも実際には、結構キツい酒だったのだろう。木挽マジックでなんとかなった。 霧島→たちばな→庄三郎→木挽の順で気に入りました。
そんで3件目 もうお客さんは具合が悪くてギブ気味だったのだが、私はテンション上がっちゃって適当にぐるぐる回って入店。 不覚にも! 店の名前おぼえてねー! 海童という焼酎飲んで、ウィスキー水割り飲んでバーボンソーダ飲んで、常連のお客さんとも話して すっごくすっごくすっごく楽しかった気がするんだが
・・・・・なんも覚えてないんだよな
どうやってホテルまで戻ったのかも なんて店だったのかも 覚えていない。 お客さんがいつ帰ったのかも覚えていない(途中で帰ったことはかろうじて覚えている) マスターが宮崎弁全開だったことは覚えてるんだが・・・
26になって最初の飲みがこんなんでどうすんだ、俺
今年もヨッパが続きそうです。
続く
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2005年10月05日(水)
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