尻は桃尻、ふんどしは十人十色(夏の北国行きで 後編) |
ここがどこなのか、どうでもいいことさ どうやって来たのか、忘れられるかな
いや、そこが岩手の水沢であることはどうでもいいことじゃないし どうやって行ったのかもしっかり覚えている。 そんな仙台→岩手編
土曜日 昼前に起床。 虫の声はすでにセミではなくすいっちょんだ。秋なんです。でも暑いンです。 ベランダに出てみると、おとといや昨日、台風だ大雨だ騒いでいたことが嘘のような快晴。 そうなると東京から引きずってきたビニール傘はいよいよ邪魔なだけなんだが、友人宅に置いていくのもなんなんで、片手にしっかり握ってお暇することに。
午後から用事のある友人とは地下鉄の最寄り駅で別れて仙台駅へ向かい、そこからさらに一ノ関行きのバスに乗車。 仙台から高速バスに乗るのは、主に山形方面への移動が多かったのだけど一関行きに乗るのは初めての体験だ。つーか一関行くこと自体が初めて。ウソ。一関は大昔に家族と行った事があったような。金色のミイラがいるのが一関ではなかったっけ?天国まで延びていくんじゃないかというほどべらぼうに長い階段と坂道を登っていった記憶がある。 暑い暑い夏の日、なんでこんなところを昇らなきゃいけないんだと憤慨したような、しなかったような。 まあ、 そこがどこだったのか、どうでもいいことさ。 どうやって行ったのか忘れちゃったし。
てなわけでバスに揺られて東北道を北上。 仙台から一関って、新幹線で3駅離れているから遠いものだとばかり思っていたんだけど意外に近いんだな。そして運賃も意外に安いんだな。 以前友人が仙台から古川まで高速バス乗ったら1300円かかったと言っていたので2000円くらいなんだろうと思っていたんだけど、1500円ポッキリ。そして1時間弱。新幹線や在来線で移動するのがあほらしくなるようなお値打ち価格だ。
一ノ関駅ではれこすけさんが待っていてくださった。ありがたや。 れこすけさんは一ノ関在住、アンガールズ田中似のナイスガイで、東京で赤犬ライブがあった時に初めてお会いしたんだった。 初めて会ったときはその名の通り「レコスケくん」バッグを持ってたなー ライブ見に行った後の呑みで急にズボンとパンツ脱いで普通に日本酒飲んでてたまげた。「何故脱ぐの?」と尋ねると「あ、気にしないで下さい」などと言っていた。 気にしないわけがないだろう。その場にいた皆があっけに取られたもんだ。 その後、れこすけさんの奥さんであるmiuさんが車で迎えに来てくださる。
ん?こんな東北での光景、いつかもあったような気がするな。 そこがどこなのか、どうでもいいことさ・・・なんてすっとぼけてもしょうがない。 ああ、酒田でのまにさん夫妻と落ち合った時のことを彷彿とさせるんだ。
miuさんに送っていただいて「世嬉の一」の蔵へ。 蔵といってもそこで日本酒を造っているわけではないらしい。なんだかよくわからん。地ビールは敷地内で造っているらしいんだが。タダ酒呑んでからレストランに行き、さらに酒を呑むことに。 しかしタバコ吸っていたら「すいません、禁煙なんです。喫煙所は入り口だけなんで」と注意されたので、入り口に一番近い席に座って話、酒、ときどき、喫煙という具合に。なんだか家の中で食事してるんだけど、喫煙する時だけ換気扇の下に行くみたいな感じだな。 しかもこの世嬉の一レストラン、地ビールもあるというので頼んでみたらことごとく売り切れ。なかには「ビールサーバの調子が悪くて」今日は出せないなんてのも。もうちょっとしっかりしてくれい。 と、文句を垂れつつ飲酒。 れこすけさんは赤犬の会場でお会いしたのと、フジロックの時に人ごみの中から「ヤツザキさーん」と呼びかけてくださって立ち話をしたくらいしかなかったので、「なぜれこすけなんだろう?」と疑問に思っていたのです。 答えは簡単。 レココレ大好きレコードコレクターだったから。 それもビートルズはもちろんのこと、ニール・ヤング、スモールフェイシズやポール・ウェラー、13thフロアエレベーターズやホークウインド、そしてはっぴいえんど好きという・・・ あれ?こんな東北の人、他にもいなかったっけ? それが誰だったか どうでもいいこと、じゃないわ。 こんなところも酒田のまに御大とかぶるなーホントに。
なぜ岩手にやってきたのかというと、この日は水沢にあるDeeDee'sCafeというロックバーでDJイベントがあるというからなのです。 タイミングいいよなーディーディーズ行こうと思ったらDJイベントやる日だっただなんて。 れこすけさんもDJとしてイベントに参戦するのでした。 音楽話をしていた時に、ぽろっと「私はwhoが好きで」と漏らしたら「ああ、じゃあ今日はフー回しますよ!」とのこと。 そしてmiuさんに電話して 「レコード棚の前に移動して。そうそう、フーのレコードあるでしょ、何がある?持ってきて!」 と頼む様は! ああ、なんかこんなところも酒田の御仁ぽい!レコスケ遺伝子は全国に散っているのか! 世嬉の一レストランを後にして、れこすけさん行きつけの「やきとり道場」という店に行くことにしたんだけど(この時点で午後5時)、あいにく休み。 別の店で昔のロッキンオンとか増井修の話をしながら(こないだ大阪からやってきたオバ氏と新宿で飲んだときも増井話に花が咲いたんだった)うちに6時になったので店を出て、一ノ関から水沢に移動。 電車が1時間に一本なんですよ。 miuさんは具合が悪いそうで水沢に行けなくて残念。しかしmiuさんもギタポ好きの粋な女性だったんで、是非とも飲みたかった。フジロックに参戦し続ける夫妻っていいよなー。この勢いでフジロックに参戦し続ける家族になってもらいたい。苗場でそんな姿を見たい。
水沢に移動後はホテルにチェックインしてからいったんDeeDee'sCafeへ。 ここは前に来た街。12月末に出張で訪れたんだった。あの時はホテルにダニがいるわ変形金縛りにあうわ朝急に「作業終わり次第山形に向かってくれ」と言われるわ楽勝で終わるはずの作業が長引いてファミリーレストラン(という名の定食屋)でかき鍋うどん食べるハメになったわといろんなことがあった。 その時は寄れなかった、あこがれのサザンマンでも北朝鮮でもない、あこがれのディーディーズカフェ。 それは潰れたジャスコを通り抜け、前沢牛専門店を横目に進んだところにありました。 こんなところにロックバーがあったのか!ビックラ。 壁を埋め尽くすロックや映画のポスター群! 無造作に流され続ける昭和任侠映画! ああ、なんで私は12月出張時にここに立ち寄らなかったんだ。わけわかんねえ。過去の自分を悔いる。 壁のポスターにマッドハニーが多かったのですっかり気をとられていたら、れこすけさんとマスターがやおら服を脱ぎだした。 そして現われたのは・・・
ふんどし締めた日本男児の姿ですよ!
そう、この夜のディーディーズカフェのDJイベントは、 「DJ全員がふんどし姿で選曲をする」 というコンセプトだったのです。 水沢は「ふんどしのメッカ」、蘇民祭開催地だからね! 蘇民祭の素敵な画像・映像はここ↓ http://wadaphoto.web.infoseek.co.jp/kisai_2.htm これこそ「入れっこ吸いっこ」の祭典!うひゃー来年は行ってみてぇ。
ふんどし姿に目をチカチカさせながら、イベントが始まるまで再びれこすけさんと呑みに行く。 「水沢にもやきとり道場がある」ってんで行ったのだけど、これがまあ、店内が煙とコゲと油で真っ茶っ茶。カウンターしかない店なんだがそのカウンターの上にはどこで採ってきたのかさっぱりわからない、ものすごく巨大なハチの巣が何個もぶら下がっているし、今はもう動いていないような時計がいくつもいくつも置いてある。冷蔵庫にはテープで切り貼りした「おかげさまで42周年」という文字が。そのテープすらもすでに変色しているからな。一体創業何年なんだろうか。 そんな一筋縄ではいかない店だから、店のおやじも強力だ。コワモテの白髪頭を刈り込んだじいさん(推定年齢70代)。全身で「頑固オーラ」を放っている。手には木で作った硬球を握って投げたりしながら阪神戦を見ている。こえーなー。これは早々と店を退散させられるんではないか。 店に入った途端、れこすけさんのことをジロっと見据えていたから「ああ、こりゃほんとにやばいかも」と思っていたら、じいさんが口を開く。
「なんだー、アンガールズが来たのかと思ったよ」(強力な岩手訛りで)
!?
アンガールズ!
こんな頑固じいさんの口から出てくるとは思わなかった! そうか、アンガールズってのは何処に行ってもどんな世代にも通じるのだな。ジャガジャガ効果は思ったより広い。 あとこの店で驚いたのは、頼んでもいないのに焼き鳥が10本近く出てきたんだけど全部同じ味であったこと。しかも焼き鳥の種は冷蔵庫の中に新聞紙が敷いてあって、そこに無造作に置いてあったものだった。 ここの壁にも蘇民祭の写真が貼ってあった。このじいさんのふんどし姿は強力そうだもんな。
ここがどこなのか、どうでもいいことではないので 水沢に行ったら「みちのくやきとり道場」行ってみてください。 常に阪神戦流れてるから。CMの間しか注文できないから。
というわけでようやくディーディーズカフェPresentsふんどしDJ祭り「熱帯夜」 店に戻るとすでにふんどしの人たちが増殖、マルチプライズしているのだった。 ああ、ついにふんどし祭りがはじまるんだ、とあらためて実感する。 ふんどしの人たちが何人も集まって、多少はお互いのふんどしを褒め合ったりするんだけど、おおよその部分では別にふんどしであることに関係なく普通に話し合ってる光景っていいですね。 ふんどしだけど普通に「あ、この曲いいな」という選曲をしていたりして、ふんどしであることに重点が置かれているようで置かれていないようで置かれている、という絶妙さがいい。 自然体としてのふんどし。ナチュラルふんどし。 これが高円寺だの吉祥寺だのでの光景だとサブカル臭プンプンで鼻につくだけなんだけど、ここだからいいのだ。 ディーディーズカフェも水沢にあってくれてよかった。東京にあったとしてもおもしれー店だな!と思うのだろうけど、水沢にあって、でもそれが水沢にあるということを関係なくおもしろい、いや、水沢にあるからやっぱりこの店はいいんだよ、という絶妙さが素晴らしい。 こういう書き方をするとディーディーズカフェとナチュラルふんどしがイコールのようですがね。 イコールはいくらなんでも、なんで「ディーディーズカフェはナチュラルふんどし色」くらいでまとめておこう。 そして(れこすけさんの)ふんどしはえんじ色。楽天カラー。 (マスターの)ふんどしはからし色。 他の方の赤ふんも決まっていた。
「今日は来れないかも」と聞いていたショウさんが来たのにはビックリしたけどよかった! ショウさんと会うのは今年の頭以来。アラバキの時は私がヘタレで(寒いし眠いしで後夜祭不参加)会えなかったからなー。 久々にお会いしたショウさんが 「いやあ、これだけ皆ふんどしだと、自分も締めてくればよかったと思った」 と言ったのには激しく同意。ホントだよ。 まさかお客さんもふんどし締めてくるとは思わなかったよ!しかもひとりやふたりではなく! そりゃーふんどし締めたくなるわ。ふんどし締めてない方がマイノリティになるところなんてそうそうないぞ。 ふんどしの締め間からのぞいた尻毛に嫉妬を覚える街。それが水沢。
そして時刻は11時を回るか、という頃に藤村さん登場。 思えば、夏の間に岩手に行きたいなと思ったきっかけは藤村さんから「夏にふんどし海水浴をやるんでよかったらどうぞ」というメールをもらったからだった。そのふんどし海水浴もディーディーズカフェ主催だったのです。 残念ながらふんどし海水浴は参加できなかったが、このふんどしDJイベントに来ることができたからいいのだ。 藤村さんも当然のようにふんどし姿でした。 格闘技で鍛えた体に、ふんどし。 抹茶に牛乳。小倉あんにマーガリンと同じくらいのマッチ感。 赤犬ライブの時もステージ上に登場した藤村さんは 「ボウズ頭、鍛え抜かれた肉体 プラス ふんどし、日本刀」 という三島由紀夫、いや盾の会を彷彿とさせる格好で現れていたのだけど、この人は本当にふんどしがよく似合う。 ミスターふんどしとかを決めたら、グランプリに輝くんではないのか。 ふんどしはネズミ色。 ↑あ、これが一番原曲に近い言い回しだな。桃色のふんどし締めてる人はいなかったので。
そして藤村さんのレコードコレクションがこれまたすんごくて、シングル盤の山・山・山。 入手困難なシングル盤ばかりだ。さすが名盤解放同盟好き。 「何をかけるか決めてないんで、好きなのチョイスしてくれ」と言われたので適当に選ばせてもらいました。 いやー浮浪雲の主題歌(吉田日出子が歌ってた)や本宮ひろ志大先生の歌声が聞けて満足だ。 それにしても「お酒の唄」という唄がとんでもない名曲(迷曲?)でたまげた。酒の名前が次々に歌詞に登場。これは現代版に置き換えてもいけるんではないでしょうか。アントニオ古賀の「クスリルンバ」でもいいけど。 そんなバカレコードDJを聴きながらテレビで24時間テレビ。ちょうど「元気が出るテレビ」名場面特集が流れていてよかった。 電波少年も松村時代多めで流れてて、もう言うことはない。
このあたりから夜も大分更けていたので、80年代ポップスだの歌謡曲だので盛り上がる。 お客さんのひとり(当然ふんどし)がマイクを持って次々に歌っていくのですよ。で、この人のお尻がキレイなんだよなあ。ちょうどいいボリュームなんだけど締まっていて。 まさに桃尻。橋本治。ピンクヒップガール。ガールじゃないけれど。男だったけど。 最後にはその桃尻の方、いじみさんのふんどしが解かれていたけれど、前は死守していた。 その、むやみにずっぽんぽんにならない感じがまた絶妙に!だ。 大阪でストリップに連れて行って貰った時も思ったけれど、全部丸見えはよくないな。一部は隠れていたほうがいい。モザイクでもカスリでもいいけど、隠されたそこにロマンつーかドリームを持っていたいものである。
いやー来てよかったふんどしナイト、ディーディーズカフェ。 あまりに愉快だったので、そのまま「街で唯一朝5時まで営業」の白木屋(これも酒田っぽい)に行って 朝5時まで飲んじゃった。 もう朝4時40分頃になると 酔っぱらっていたので本気で思っていたような気がする。 そんなに綺麗に思っていたか自信はないが。酔っぱらってるだけだから。 ここがどこなのか、どうでもいいことさ どうやって来たのか、忘れられるかな、って。
いやー今回も長いな。すんません。 しかも細野晴臣のアルバムばかりきいてたらすっかり水沢の思い出を細野色に染めてしまった。 ほんとはそれじゃいかんだろー 水沢っていったら江刺 江刺といったら大瀧詠一じゃないか。 細野色につけないでくれぇぇーという声(妄想)が聞こえてくるようだ。
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2005年09月08日(木)
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