過激恋愛依存症アトラクション |
久々に純粋・読書読み日記(この日記のカテゴリは旅ではなくて、実は「読書読み日記」なのですよ)をしたいと思います。 私は前評判が悪いものに関しては徹底して読まず嫌い・見ず嫌い・聞かず嫌いをしていたのですが、そういう度量の狭さイクナイ!と思いまして、 「読む前からイヤな予感がしてたが、読んでみたらさらにイヤな気分になるんだろうと思われる本を読むキャンペーン」を行うことにしました。 悪循環なキャンペーンだな。しかし、読んでみたら案外おもしろかったということもあるかもしれないので、これはいわば未知の世界への冒険なのである。
ルール 1.「話題になった/話題になっている」作家の本を選ぶ 2.古本屋で200円以下で購入する 3.どんなにつらくても最期まで読む
そんなわけで第一回目にチョイスされたのは「桜井亜美」。 前評判によると 「援助交際、近親相姦、集団レイプ、オヤジ狩り、引きこもり、エイズなどさまざまな状況に置かれている人間の恋愛がよりリアルに描かれている。」 「現代の若者の日常を切り取った様な生々しい世界と美しい言葉で綴られる恋愛。」 わたくしも一応、現代人なので心して挑みましたよ。 「イノセントワールド」が一番有名らしいが、古本屋で見つけたのは「トゥモロウズ・ソング」というやつだったのでそれを読んでみました。表紙写真が蜷川実花。ぬかりねぇな、という印象。
で、読みました。 安い。 この一言に集約される。 まず本の薄さと字の大きさに驚いたんだけど、それ以上に中身のなさに驚愕でした。 なんつっても主人公が「高校に行ってなくて、ヴィヴィアンの服が大好きで、クスリをやりまくって、サイケトランスが大好きで、テレパシーがあって、高層マンションに住んでいる」17歳の女の子で、相手の男の名前は「シド」(!)(17歳ホスト)ですから。 んでこいつらセックスばかりしてて、マンション工事現場を「あたしたちの記念日ィー」とかなんとかいって爆破(!!)しちゃったりする。そいでエイズ検査薬をふたりで同時に試したらエイズに感染していることが判明。 主人公の双子の姉は拒食症の引きこもりなのに、クラブで踊ってたりして、しかもそいつの彼氏は盲目のDJ(!!!)で同棲してんの。で、姉は死にかけて部屋には植物がイッパイ。姉の心の優しさで植物がスクスク育ってるとかなんとか。姉の心を閉ざした人物は中学の教師なんだが、とんでもない美貌でこいつが姉を妊娠させ、殺しかけたらしい。 んで、自分のテレパシーを使ってその復讐をしようとする。 テレパシー軍団(率いるのは盲目DJ)が協力してくれる。 美貌教師もテレパシーを持っていた(!!!!!) んで、闘って、最終的には双子の姉が美貌教師をやっつけてシドが迎えに来てチャンチャン。エイズについては言及ナッシング。
野島伸司原作なのかと思いました。過激に次ぐ過激。 どこらへんが生々しい世界なんだろうか。というか、これは「生々しい想像」なんではないのか。テレビや新潮45なんかで「少女たちの乱れた実態」とかいう特集がよくやっていますが、そういうところで手垢まみれの知識人の方々が振りかざす「いわゆる無秩序」ばかりだなーこりゃ。 「援助交際」に重きをおくというあたりが顕著だな。 実際に援交やってたとしても、高校生内ではどうってことない「日常」で「アタシ、援交やってるから非日常のヒロイン!」なんて思ってる子はいないわけだ。 時がたって本人が「あれはよくなかった」と思わなければ非日常ではない。(まあ、これは援交に限ったことではなく、不倫でも離婚でもやってる本人が過剰に非日常/ドラマチックだと思ってたりするのも一緒だ。日常であれば問題はない) 過激=ドラマチック、ロマンチックという価値観がもうすでに「ありえない」んだよな。 「ありえない」のならば、ありえない話書いてみましたーね、ありえないでしょ?くらいの心持ちが欲しい。「ありえない」をエンターテイメントとして見せてくれているならば「ね?ありえないでしょ?」という心持ちがなくても結構だ。 この作家の場合、「ありえない」をエンターテイメントではなく、「うっとり」に着地させようとしている魂胆がミエミエで鬱陶しい。ロマンチック過激派。文字通り吐き気がするほどロマンチックですよ。
で、さらに問題なのがほんとに「うっとり」しちゃう10代の少女がいたりすることだ。 私が10代の時は野島ドラマ最盛期だったので、「未成年」やら「高校教師」やらを見ては次の日学校で話題にするということが日常茶飯事であったが、決して「うっとり」していた子はまわりにはいなかったな。「今週、またすごいことになってた」「どこまで過激化してくんだろう」「こんなの実際にないのにな!」(うちの学校は女子校だったもんで)という着眼点で話をしていた。具体的に言えば「反町、胸ペンダントに銃弾が当たって死ななかったのはないだろー」というようなことだ。 そういう「うっとり見破り装置」的なコミュニケーションが周りにない人がいるということは驚きである。コミュニケーションじゃなくても、自分の中に主観的な自分と客観的な自分を配してるだけで十分だし、そうじゃなくてもナンシー関を読むなどの方法はいくらでもあるだろうに。 で、最後におくづけ見て驚いたが、桜井亜美って同じような本を20冊くらい発表してんのな。 高校の時の先生が「ハーレクイン小説ってのは、人物設定をインプットするだけで自動的にストーリーができあがるようなコンピューターを使って書かれているのですよ!」というものすごい偏見を語っていたことがあったが、それを思い出した。ライト版ハーレクインと呼んで差し上げたい。
桜井亜美の本と並行して恋愛依存症についての本を読んでいたんだが、桜井亜美で「うっとり」してしまう人はきっと恋愛依存症なんだと思うようにした。 「感覚的な出会いを好む」「デートを重ねることによって相手を見極めずにすぐにセックスしたがる」「男性の愛してるという言葉に弱い」「四六時中一緒にいないと不安になる」「相手の現実を見ようとしない」「別れる時はストックを作ってから別れる」「恋愛にのめりこむあまり私生活がおざなりになる」などなど。 そして彼女たちはきっとオナニーをしない。 今、日本に蔓延っている「すぐにセックスできること/彼氏彼女がいる至上主義」は本当に罪深い。いろいろな価値観があっていいだろうよ。
もっとも問題なのは、こういう安易なものを私が100円で手に入れたってことか。 安い。そりゃ蔓延るよ。 100円ですら払いすぎ。図書館で借りて読んでみて下さい。
話はかわるがフジロック追加決定。 ベックもフーファイもありがたいが、そんなことよりもCKBとエディ・リーダーですよ!キャー、フェアグラウンド・アトラクション大好きなのれす。こういうロマンチック(と私自身はあまり思ってないんだが)は歓迎だ。まさにパーフェクト。
|
2005年03月07日(月)
|
|