ある大学院生の日記

2002年04月10日(水) 納税者番号制の経済分析

べつになんということもないはずなのだが,2限と4限にでたらえらく疲れてしまった.ふう.

そういえば,日経新聞に「二元的所得税」の解説記事が出ていて,それはそれでよくまとまっていたように思う(←えらそう).まあ,二元的所得税,とか大上段に構えなくても,いまだって十元的所得税なんだからそれを簡素化するだけの話で,「公平・簡素・中立」の原則のひとつをたどってみた,というだけの話になるような気がする.だいたい,金融関係の所得をひとまとめにしちゃえ,というのは,株式譲渡損の相殺や繰越ができないという現在の税制の欠点(だとおもう)を解決する手段としてかなり前から言われていたところでもある.利子と配当の税制上の扱いが異なることは,その法律的(?)な意義なんかからみれば正当化されるのかもしれないけども,金融デリバティブの発展に鑑みれば,税法上のpitfallを増やしているに過ぎないともいえる.というわけなので,「税制改革を経済再生に結びつける鍵のひとつだ」なあんていう書き方はあまりに大げさに過ぎる,とおもう.やはり,神は細部に宿るのではないか?(なんのこっちゃ)

しかし,それにひきかえ夕刊の「忍び寄る納税者番号制」という記事はひどい.もちろん,納税者番号制導入にはプライバシーの保護等の情報管理が不可欠だし,みずほの事件なんか見てるとうかつにネットワークでつなぐのもどうかしらん,とおもわないこともないが,だがしかし.「資産を把握されたくない既存の個人投資家」というのは,なにか後ろめたいことでもあるんだろうか?そういうやつからこそ税をとっちゃえばいいのだ!(←突然感情的.こんな論理はない).やっぱり「不明朗なお金で成り立っているわけではない」ことを証明できるから導入すべきだ,という大和総研の吉川室長の意見が正しいと思う.「納税者番号制が不公平感の是正に役立たない」というのは,「役立たない」とマスコミが書くからであって,少なくとも不公平「感」の是正に役に立たないわけがない(感情の話なので立証しずらいけど).言うに事欠いて「税制の理想を追いかけるあまり経済や株式相場から活力を奪うのは本末転倒」とは何をいやがるコンコンチキめ,とやや怒りすら感じてしまう.税は合法的な財産権の侵害なんだから,そのための論拠はちゃんとしてないといけないし,少なくとも取られる側を説得するに足るものでなければならない.課税理論とはその正当化の歴史だ(と思う).それを「ルールを破って儲けてるお金持ちがいるけど活力のためだからしょうがないよね」で説得できるとでも思っているのだろうか?読者をバカにするのも大概にしろこのスットコドッコイめ,と思う.これが高度成長期ならまだ「活力」もいいわけになるのかもしれないけど.「公正な競争」は市場メカニズムを基本的なフレームワークとする経済社会の大原則のひとつである.「信認の欠如が不況の要因のひとつだ」などとノタマッタ経済紙が,これまた経済の根幹のひとつである税制に対する信頼を喪失させるようなことを書いて,なんともおもわないのだろうか?「日本経済新聞社の良識を疑う」と投書してやろうか(そんなにひまじゃないけど).


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