ある大学院生の日記

2002年02月27日(水) 最後の授業

忘れかけてはいたんだけど,今年度最後の授業がありました.いやいや. David da la Croix,and Matthias Doepke [2001] "Inequality and Growth: Why Differential Fertility Matters " UCLA Working Paper #803 が題材でした.子育てに固定費用がかかるようにすると,賃金率の高い(=人的資本の多い=親も金持ち)な家計は子供の数を減らして,その子供に教育投資をどーんとやる,逆なら逆,ということになり,それがひいては経済成長を阻害する,とかいう論文.シンプルな(じゅうぶん複雑だけど,まあ,操作可能だということで)わりにいろんなインプリケーションが得られる論文だそうだ.GMM推定のほうは,まあ,いいや.カリブレーションも…いまひとつぴんとこない.数値シミュレーションといってくれればピンとくるけど.現実のデータにあてはめてほれほれそっくり!と主張するのがカリブレーションだと思っていたけど,そう思って読むとちょと違う.人的資本の形成には,平均的な人的資本量と,親の人的資本の量が関係するのだが,平均的な人的資本の影響のほうが大きければ,あたりまえのことだが,人的資本の不平等の拡大の仕方は小さい.この論文のキーポイントが子育ての固定費用にあるとすれば,これの大きさで比較をしてくれるとおもしろいかもしれないなあとおもう.保育園の供給拡大なんかに非常な政策的インプリケーションを持つし.

とはいえやっぱし,経済のなかでの不平等の拡大を世代重複モデルでいじる,ということになると,結婚の問題はもちっと明示的に書かれてもいいと思う.むかし読んだ論文で,結婚がランダムだと,不平等の拡大の仕方はきわめて小さくなる,というのがあったとおもうし.社会的にも裕福な人間は裕福な人間と結婚する,とか,高学歴同士のカップルが多い,というのはもちろんそうなんだろうけども.ううむ.

というわけで,やっぱりなにもすすまない.


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