あたしは手が小さいです。
もうすでに、娘のほうが大きいくらいにして。
それなのに、です。
あたしが作るおにぎりは相当にでかい。らしい。
連日、金の使い道について、散々うるさく言われつづけてきた夫が、
「おにぎり持っていこうかな」
はい?
持っていこうかな、ではなく、作ってくださいだろう、と言う突っ込みはやめにして。
「いくつ?」
「3つ、かな」
娘のお弁当つくりのついでに、自分の分も作っているので、あとひとつくらい増えても大差ないのだが、そこは恩着せがましく
「仕方ない、その分早く起きなくちゃ」
と皮肉を言うことも忘れない。
さて、おにぎりだけって言うのも味気ないので、当然、おかずもつめることにする。
ところが、適当なお弁当箱がない。
いつだったか、学校の体験宿泊で、帰りに捨てられる容器、ってことで買ってあった容器につめることにした。
「おかずもつめたからね」
自己満足で、にっこりと言うあたしに、
「おかず?おかずかあ・・・」
迷惑そうな顔をする。
「おにぎりだけじゃバランス悪いでしょ?せっかくだから持っていきなさいよ」
「うーん・・・」
妙に歯切れの悪い夫だが、意に介さず、包みを手渡し送り出した。
これから3つ分のお弁当作りかあ、、、まあ、息子が中学に入ればいやでもお弁当作りは3つになるのだし、と思ったあたしは仕事帰りに、あまりに味気ないから、夫のためのおかずを入れる小さいお弁当箱を探し、おにぎりの具にする昆布の佃煮やら、インスタントの味噌汁やらを買い、やる気満々で帰宅した。
ところが。
「やっぱさ、おかずはいらないから」
帰宅した夫は言う。
「おまえさ、相変わらずおにぎりでかいよな。あれだけで充分腹いっぱいだし、急いでるときにおかず食ってる暇はないんだよな」
せっかくの厚意を踏みにじられた。
「じゃあ、もうお弁当いらないの?」
「いや、おにぎりだけはあったほうがいいな」
「インスタントの御味噌汁も買ってきたのにいらない?」
「うーん・・・なくてもいいかな」
せっかくいい妻を演じるべく用意したものはことごとく全て否定され。
翌日、おにぎり3個を握りながら、そこに込めたのは他ならぬ愛情ではなかったのは言うまでもない。
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