「ただいま〜」
玄関から声がする。
あたしは、と言えば、のっぴきならない電話の真っ最中で。
お帰り、と声を掛けたものの、顔を見に行くこともせず、電話を続けた。
途中、声を荒げることになり、きっと、隣近所にまで聞こえてるよな、窓は閉まってたかな、と半ばうろたえ、声のトーンを落とした。
詳細は書けないが、これからのあたしの生活にとって、現在とても重要な場面に面している。電話は、そのことに関する話で、終わった後も、放心状態に近く、のんびりと子どもに向かい合う気には到底なれない。
そんなぴりぴりとした空気が伝わるのか、先ほどの怒声に恐れをなしたのか、息子は全く近寄ってこない。
でも、ママのほうがそろそろ限界だよ。
その温もりとその重さとで、癒してほしい。
階下へ行って、息子を抱きしめてこよう。
あたしのマイは非通知です。