一日の始まりに、玄関先まで見送るのは、なんとなく習慣になっている。
家族を送り出す。
その行為自体はごくありふれた日常のひとこまであって、たいした重みもないはずなのに、それがほんの些細な行き違いが起きるだけで一日を台無しにしてしまう。
今日は家庭訪問で、息子の担任がやってくる。
一応、来客を通す部屋は、日ごろ寝室兼子どもの遊び部屋、と化してしまっているので、毎年この時期慌てて片付けることになる。
朝からばたばた片付けているあたしに、遅めの出勤の夫が声を掛ける。
「この辺も片したほうがいいな」
本来なら、子供たちを送り出して、とっくに掃除をはじめている時間なのに。
いつもより遅く起き、いつもより遅く出かける夫がいるために、あたしの作業は遅れているのだ。
「そんなのわかってるし!今から片付けようとしてるところじゃん!」
言い放つあたしに
「何でおまえはいつもそうやってすぐ怒るんだよ。おまえのそういうところが嫌いなんだよ!」
「てめえこそさっさと行け!てめえが邪魔なんだろ?!」
最後の最後に浴びせた罵詈雑言を背に、出かけていく夫に謝りもせず、苦い思いを飲み込んで、掃除を続けた。
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