今年も新入社員がやってきた。
今年の新入社員の前評判は芳しくなく、年々レベルが低下していく、と、エライ人たちが嘆いていた。
なもので、当然自分のところに配属される子に対しても、大した期待はせず、とりあえず、挨拶ができるかどうか、と言うような低い要求水準から受け入れることに。
売り場にやってきた新入社員スズキ君(仮称)は一見ボケーッとしていて、ああ、ダメだ、こりゃ、と誰もが思い、全く期待せずに指導が始まる。
「まず一番大事なのは挨拶だからね。売り場で声がでてるか出てないか、それだけで昇進できるかどうか、って言っても過言じゃないよ」
「ハイ!」
「せっかく売り場作りや、数字が達成されていても、売り場で自分の存在をアピールできないと上からも評価されにくい」
「そうですね」
「それと、これから自分が担当する商品だけでなく、売り場全体が見れるようにならないと。自分の作業だけでなく、他の人の作業を積極的に手伝うって言うのはものすごく大切なことだよ」
「そうですね」
「まずはとにかく大きな声で元気よく、って言うのがポイントだからね」
「ハイ!」
自分のことも積極的に話すし、素直そうなよい子でよかった。
何より驚いたのは、自分の目標をきちんと持っていること。
そして、研究熱心であること。
「休みの日は近くの店舗をまわってます」
「雑誌なんかだともうすっかり夏の特集で、ビーチサンダルなんかおいたら売れるんじゃないかな、と思うんですよね。いつ頃から展開するんですか?」
途中息切れしたりくじけることなくしっかり育って欲しいなあ、と思う。
あたしのマイは非通知です。