売り場にいた幼いきょうだいの、お兄ちゃんが弟を泣かせた。
「どうしたの?」
子供達の母親が尋ねたが、お兄ちゃんは答えない。
じっくり見てたわけではないので、察するに、泣かせるつもりはないけど、ちょっとちょっかいを出したら弟がアピールプレイのために大声で泣き出した、ってところが本当のところではないだろうか。
「どうしたの?!」
黙り込んでもじもじしているお兄ちゃんに、母親は、語気を荒げてなおも尋ねるが、もにょもにょと何か小声で言い募っているようだ。
「全くもう!だからダメだって言ってるでしょう?あんたも悪いのよ!」
というような感じで、泣いている弟も叱られ、親子は売り場を後にしたのだが、それを見ていたバンビちゃんが、
「最近のお母さんて、怖いですね」
心底怯えたように言う。
「はあ?どうしてですか?」
「あんな風に大きな声で怒って、ばちん!とか、ぶったりして」
どうやらあたしが見ていないときに母親がこどもをぶったらしいのだが、2児の母であるあたしには、特別先ほどの母親が過剰に怒っていたようには見えなかった。
「確かに、ピンポイントであんな風に怒ってる所だけ見たら、そうかもしれませんけど、多分、そこにたどり着くまでの経過って言うのがあるはずなんですよ。何回同じことを言ってもちっとも言うことを聞かない、とかそう言った伏線があっての結果、ああいった場面になると思うんですよね」
別に見知らない母親を弁護するわけではないが、一般的な見方として話してみた。
「なるほど・・・」
感心しているバンビちゃん、それでも、やはり怖い、と言う感情は消えていない様子に、
「もしかして、怒られたことないんでしょう?」
と言うと、
「ハァ・・・、3人きょうだいの末っ子なもので・・・」
なんだか、ガックリと力が抜けた。
ちなみにあたしはひとりっこだけど、そりゃ年がら年中がみがみと注意され、悪いことしたら竹の物差しでぶたれたこともある。
怒られ慣れてないから、仕事上でも注意されると、全人格を否定されたかのごとく落ち込んで凹む。注意しているこちらはなんだか虐めているみたいな気分になって、金輪際関わりたくない、と言う気持ちにまでなってしまう。
多分、いまどきの若い子達は親から怒られることが少なかったんじゃないだろうか。
友達親子、とか言って、フレンドリーな親子関係を結ぶために、親はあんまり子供を叱ったりしない。親も子も疲れるのが嫌なんだろうね。
子供を叱るのって確かにものすごくエネルギーが要るし、自分が悪者みたいな気分になるからあまり楽しくはないけども。
怒られてばかりだと萎縮する、とも言うけど、実際の所、ほどほどがいいなんじゃないかと思う。
でも、そんなこんなで、これから入ってくる新人達は多かれ少なかれそんな感じなのかもしれないなあ、と思うと、ちと憂うつだ。
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