今から10年前。生後数ヶ月の娘と出かけるのに、よく抱っこ紐を使用していた。
ベビーカーは場所を取るし、人ゴミの中移動するのにはあまり向いていないと思ったし、よく吐く娘の様子を見るには抱っこしていたほうがなにかと都合が良かったからだ。
それにぴったりとくっつくと何より安心感があった。
当時、赤ん坊を抱っこするのは母親がほとんどで、父親が抱っこ紐を使うなんて言うのはまずありえなかった。
夫は子煩悩でそれはもう娘を舐めまわす勢いで可愛がってくれたし、世話もそれなりにしてくれたが、外出時に抱っこ紐を使うなんてことはなかった。まあ、そんなものはなくても普通に抱っこすればいいだけの話だが。
それから4年後、息子が生まれると世の中はずいぶん様子が変わっていた。
まず、父親が抱っこ紐で赤ん坊を抱っこしているのだ。それでもまだそんなには多くなく、時折見かけると、へぇ〜・・・と言う感じで感心したものだ。
そして、さらにそれから6年後の現在。
ベビーカーを押す若い父親がいる。よくよく見るとみぽりんの旦那さんだった。
「あれ〜?一緒じゃなかったんですか?」
そう、そこにみぽりんの姿はなかった。
「ええ、今日はお友達とお買い物に出かけてるんですよ」
「で、今日は2人でお散歩?」
「そうなんです」
公休日に赤ん坊と2人っきりでお出かけ。
嫌がる風でもなく、ごく普通にそんなことができるなんてすごいなあ、と思う。
彼だけが特別なのか、と言うとそんなこともない。最近よく、母親の姿がなく、父親とだけ一緒に歩いている親子連れを見かける。
父親の育児参加うんぬんと言われつづけているが、10年前のそれとはずいぶんと様子が変わってきている。
母親の育児放棄、と言うのではなく、双方の参加による育児と言うのは子どもにとっても社会にとってもとてもよいことなのではないだろうか、と思った。
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