たまに××したり。
INDEXこれまで。それから。


2003年06月06日(金) いのち。

そういえば、とふとケージに目をやる。
今日は朝から銀行やら、買い物やら移動することが多く、午前中いっぱいは外出していたあたし。
朝からばたばたしていて、ゆっくりとハムスターを見てもいなかった。

え?

ケージの中で、ぐったりと横たわっている姿が目に入る。

「モコ?」

声をかけるが、反応はない。そっと突付いてみるが、動かない。

うそ。どうしよう。

急いでケージを開け、中から出して手のひらに乗せる。
もともと気が強いのか、人の姿を見ると寄ってはくるのだが、手を差し伸べると噛み付くため、娘も恐る恐る世話をしていた。
それが、今は全くの無抵抗だ。
呼吸はなんとかしているものの、弱々しい。目もうつろで、どう見ても瀕死の状態だ。時折痙攣する様はあまりにも痛々しい。
どうしよう。
気持ちがあせる。
今ならまだ間に合うだろうか?
動物病院に電話して、急いで連れて行く。

「もう呼吸も心臓の動きも異常なんですよ。かなり危ない状態だと思います。一応心臓に刺激を与えてみて、処置をしてみます」

処置室に連れて行かれ、待合室で待つ間、汗ばかりが流れる。
嫌だった。
たかがハムスターとは言え、しかも全くなついていなかったとは言え、命は命だ。
夜になると滑車を回す音が響き、うるさいなあ、と思いつつも、ああ、今日も元気だな、と安心したり、朝、「おはよう」と声をかけると眠そうにしながら寄ってきて丸い目で見つめる。
昨日まではあんなに元気だったのに。
死んでしまうんだろうか。

しばらく待った後、処置室に呼ばれ、何とか少しよくなった、と連れて帰ることになった直後。
あっけなく逝ってしまった。

「今、結構元気になったんですよ。これなら大丈夫かな、と思ったんですが」

目を開いたまま、動かない。

「心臓はまだ動いてるんです。脳死の状態です。でも、もうダメですね。先ほどからてんかんの発作を繰り返していて、この子の小さな体には負担が大きすぎたんです」

なつかないからと世話が足りなかったんじゃないか?
もしかしたら、少し前から何らかの不調が現れていたのを見過ごしていたんじゃないか?
居たたまれない気持ちでいっぱいになる。

「もう少し早く気が付いてあげていたら」

あたしが言うと、

「そんなことはないですよ。こう言ったネズミ系の動物は多産ですよね。それって言うのはやはり中には弱い個体がいるからで、そのためにも多産である、と言うことにつながっていくんですよ。多分この子は先天的に弱い子だったんじゃないかと思います」

と慰められた。

「時間外にお手数かけまして」

4時からの診察時間を1時に電話して診てもらったのだ。

「いいえ、こちらこそお力になれなくて」

手のひらにすっぽりとおさまる小さな体を最後まできちんと看取ってくれた。
当たり前と言えば当たり前だが、きちんと一人前の扱いをしてもらえたことで、あたしはなんだか嬉しく、そして、そのことが死と言うものをまざまざと感じさせ、涙ぐんでしまった。

家に連れて帰り、帰ってきた子ども達に最後の様子をきちんと話した。
娘は真剣に聞き、息子と2人で庭にお墓を作ってあげた。

「また、飼うの?」

あたしが尋ねると、

「・・・ううん、もういい」

と寂しそうな顔で娘は答えた。


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うらら |あばら家足跡恋文

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