友人と飲んだ帰り道、路地裏に救急車がいた。雨に濡れた道路に、点滅するランプの赤色が滲んでいた。そういえば一昨日、通りかかった裏道では、女の子が大声で泣き叫んでいた。いっしょにいた男の子が腕をつかんでなだめていたけれども、人があんな声を出して泣くのを、ものすごく久しぶりに聞いた。そんなにひどくはないにしろ何かする度に疼く引っかき傷のように、それらの光景はざわざわと心のどこかに残っているが、とりあえず自分は何事もなく、こうやって歩いている。その危うさを知りながら、友人とお酒を飲み、満足して、幸せといってもよいと思う。夕方から降り始めた雨は止まない。雪になるだろうか。