日々雑感
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『僕の叔父さん 網野善彦』中沢新一(集英社新書)を買う。中沢新一が、叔父である歴史学者、故網野善彦について記した一冊。
「叔父‐甥」のあいだの関係について述べられている箇所がある。「この関係の中からは、権威の押し付けや義務や強制は発生しにくいというのが、人類学の法則であり」「精神の自由なつながりの中から、重要な価値の伝達されることがしばしばおこる。」この関係を地でいくように、中沢少年は叔父・網野善彦から、知らず知らずのうちに歴史の見方、思考の仕方の手ほどきを受けてゆく。
これが男性のあいだにだけおこることなのか否かは、人類学に詳しくないので何とも言えないが、祖父母や親とは決定的に違う風通しのよさを、自分の場合は母方の叔母に感じていたのは確かだ。
自分が小さかった頃、まだ学生だった叔母は、祖父母の家の2階に暮らしていた。木枠の窓から草が茫々としげった庭らしきものが見下ろせる部屋には、当時凝っていた油絵の道具が置かれ、画集やLPレコードがあり、漫画があり、本があった。入り浸っては、真似事で油絵をかかせてもらったり、音楽を聞いたり、ただ漫画を読んだり(手塚治虫をはじめとした少年漫画系の充実した蔵書があった)、そして、そんなとき、部屋の中に母親が入ってきたことは一度もなかった。面白いカードを見つけたといっては買ってきてくれたのも、バレンタインデーのチョコレートをいっしょに選んでくれたのも、叔母だった。ただいっしょにいるだけで楽しかった。彼女を通したからこそ知った世界というものが確実にある。
その叔母の娘である従姉妹は、逆にこちらの家が好きらしく、小さい頃から何かあると泊まりに来たがる。「ここに来るとなんとなく落ち着く」という彼女が、伯父、伯母であるところのうちの両親から、何を感じているのかはわからない。けれども、ある日、こっそりと教えてくれたところによると、「今の彼氏は雰囲気が伯父さんに似ている」ということだ。
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