日々雑感
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2004年06月06日(日) イディッシュの唄

街の中に、かつてユダヤ人地区だった広場がある。16世紀半ばにユダヤ人が追放された後、シナゴーグを壊してその上に教会が建てられたのだが、夕方、側を通りかかると演奏会のポスターが貼られていた。イディッシュの歌の演奏会である。ちょうどあと30分で開演ということで、当日券を買い、聞くことに。

イディッシュ語とは、東欧においてユダヤ人が話していたドイツ語が、ヘブライ語やスラブ語の影響を受けつつ独自に発展していったもので、耳から聞く分にはドイツ語の少しきつい一方言といった響きだ。ユダヤの音楽では「ドナ・ドナ」がよく知られているけれども、ああいった哀感を帯びた調子の歌がつづく。ボーカルの女性が素晴らしい。ひとりハープを奏でながらの弾き語りなのだが、少しかすれた、それでいてどこまでも深く伸びてゆく声だ。

歌を歌うためには言葉が要る。イディッシュが特殊な言語であるだけに、そのことの意味について考えてしまう。

終演は9時すぎだったが、外はまだ明るい。夕映えの残る川岸を歩いて帰る。水量がいつもよりも多い。渦が巻いている。橋の上から流れの音がはっきりと聞こえる。音をたてて流れる川は怖い。




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