過失軽薄日記
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管理人は現在杭州にいますが、どこにいようとうすらオタク気味です。 2008年頭に帰国予定。大陸に至った経緯は2006年3月22日あたりをご覧ください。

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2003年07月08日(火)/その真面目さは、毒キノコにでもあたったとしか思えない。/ 蒼き狼

蒙古方面について、現在一応通史らしきものには目を通したという状況ですが、当初はほとんど知識がない状態から始めたためか、一つ文献にあたるたびに自分内の蒙古観がどんどん変貌してゆくので、少し前に自分が何を考えていたのかあまり思い出せなくなってきました。もう年でしょうか。かような状況ですので、薄れゆく最初の印象を今のうちにとどめおいておくのも一興かと思い、自分内蒙古ブームの嚆矢となった「蒼き狼」について感想を述べてみます。こういった有名な文学作品にネタばれも何もないような気もしますが、一応、以下ネタばれているのでご注意ください。


//////////////↓ネタばれ注意↓//////////////

「蒼き狼」感想

モンゴルの一氏族に生まれた鉄木真(テムジン = チンギス・ハン)は、実は父親がメルキト族の人かもしれないので、自分はモンゴルじゃないのかと大変悩むが、ある時、とある老人に「モンゴル(族)は年をとると狼になる。狼になるかそれ以外になるかは実際の生まれに関係なく自分で決めればいい」みたいなことを言われ、じゃあ俺は狼になるんだと決意し、たまに弱気になることもあったがおおむねそのように生き、大陸を次々に征服していった。

というのがあらすじでしょうか。こんなひどいあらすじでは伝わらぬと思いますが、大変面白かったです。さらに、さながら叙事詩のような高い調子の淡々とした文体が、往昔の蒙古高原の雰囲気を見事に伝えており素晴らしいです。

しかしながら、そこで語られているのは、シビアな生殺与奪であったり、苛烈な戦闘であったりして厳しく荒々しいこと極まりありません。もう少し生ぬるくても罰はあたるまい。何万人も皆殺しとか、いついかなる時も淡々とした文で書いてあるので、厳しさ倍増。読んでいる私も眉間にしわが寄り厳しい表情に。
成吉思汗(チンギス・ハン)がやったことというのは、小さな氏族同士で小競り合いの絶えなかったモンゴル系の民族を統一 → 金ほか他国への侵攻という感じなのですが、モンゴル統一以前などは、攻め込んだ一族の男子のことごとくを降伏も許さずに景気良く滅し去ってゆくので、人事ながら蒙古高原の人口の激減を憂えてしまいました。もったいない。貴重な人的資源だろうに。

井上氏自らがあとがきで述べている「成吉思汗の征服欲とはどこから来るのか」という問いの答えは、やはり「蒼き狼であるために」ということになろうかと思われますが、長征を始めてからは、ほとんど故郷のブルカン山麓に帰ることなく、常に移動しながら、各地で戦闘に明け暮れるというのは、いくら本人の意思であるといっても、随分と過酷な選択をし続けているように見えます。ある程度大人になってくると、ありたいような自分であるために行動したり選択をするというのが、いかに難しいことであるかが骨身に沁みてしまうので。単に私が駄目なだけか。ほんと一体どこで間違ってこのような日記を書いているのやら。

//////////////↑ネタばれ注意↑//////////////

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