2001年12月15日(土)/違いのわかる、へたれ王。 |
今回は、グイン・サーガの話です。ネタばれが困る方はご注意を。
グイン・サーガの新刊(83巻)を読んだ。前巻に引き続いて、この作品で私が端的に言って一番好きなキャラであるレムスがたくさん登場するので、非常に喜ばしかった。いやそのう、突然好きキャラを白状されて、閲覧者の方も困惑していることと思いますが、以後、困惑に乗じてレムス語りです。すいません。それで、強引に話を続けますが、レムスときたら、グイン・サーガの中でもかなり不幸な部類に入るのではなかろうか。純粋に己自身であれたためしがないあたりなどが。現時点に至るまでのレムスの変貌はこんな風である。(あくまでも個人的な解釈なので、レムスファンの方々は、気にしないで下さい。ていうか、先に謝っておきます。すみません。)
<レムスの歴史> 物語初期:虫も殺せぬ気弱少年(体も弱そう) →怨霊憑きにより、自我、知性の萌芽(失礼)。ひねくれる。 王即位後:依然怨霊憑きでかんしゃく持ち。うっかり機嫌を損ねた者は投獄。 そのくせ、劣等感に苛まれたいじけガイ。 人の輪に入れず、寝床ですすり泣いたりする。 青二才なため、臣下たちに侮られて泣き寝入りする日々。 おまけに有能な宰相と比較されてさんざん凹まされる。 部屋の片隅で膝を抱えている姿等が容易に思い浮かぶ(濡れ衣)。 その後、自分に憑いていた怨霊を逆にとりこんでパワーアップ したと思ったら、本作品の大ボスと目される怪物の 傀儡となってしまい日夜暗躍。たまに我に返ることもある。
仮にも王様だってのに、出番が少ない事をはじめとしていろいろとないがしろにされがちなところを含め、実に私好みのキャラである。まったく完璧だ(何が)。そして最近の国王陛下はこんな風である。
82巻 :表紙占拠で喜びのあまり私が昇天(余計)。 久々に沢山登場したと思ったら、怪しげな黒魔術を身につけ、 いよいよ悪党風に成長。 知らないうちに何か変な具合に開き直ったらしく、 これまで内心に抱いていた、優れた者に対する妬みそねみ、 世の中への恨み憎しみを、他者(グイン)に対し堂々と 元気よく訴えるようになった。 こんなに潔くウジウジしている人は見たことがなく いっそ小気味が良い。 初期状態からは信じられぬほど頭が良さそう。 個人的には「神経質なくすくす笑い」が琴線に触れた。 ますます完璧だ。 悪者としての飛躍も十分に期待できるようになった。
現在(83巻):ねじけ風味で才能が開花して元気溌剌たるいじけガイに 成長したと思ったが、実際はそうとばかりも言えなさそうで、 空元気、やせ我慢、虚勢といった要素が目立つ感じだ。 たまに少年めいた言葉づかいをすることがあるのが微笑ましい。 基本的に気の毒。
そんなわけで、以前のへたれぶりに加え、最近のひねくれた悪者ぶりには相当ドキドキしたものだが、出番とは裏腹にレムス当人は、ひどく痛々しく、だんだん気の毒になってきたので、何とかして欲しい(と言われても)。劣等感を克服することが彼が何とかなる鍵だと思われるがどうか。とりあえず死なないで欲しい。才気溢れる自信に満ちた人が王様なのは良いことであろうが、たとえそうでなくとも、うまくすれば己の力不足を嘆く多くの人々の気持ちを理解できるような、違いの分かる良い王様になると思われる。どうにかそっち方面に発展する方向で一つ。いろいろほざいており、恥ずかしい限りだが、何とかして彼には最終的に幸せになって欲しいためこちらも必死なのだ。
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