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≫2005年07月11日(月)≫#5-1 |
降りたことのない駅で待ち合わせた。 余裕の時間にこれから電車に乗るね、とメールしてきたはずの彼は ごめん、ちょっと遅れる、とあたしを待たせた。 仕方ないのであたしは灰皿を探して駅を出る。 喫煙者の肩身が狭いこのご時世 駅前だというのに灰皿は見当たらない。 あたしは知らない街をブラブラ歩く。 誰もあたしを知らない。 気楽。不安。開放。孤独… 灰皿を探すのをあきらめたあたしは 駅ビルの片隅で空き缶を見つけて 「路上喫煙禁止区域」の表示がないことを確認して いい年して植え込みのコンクリートに座り込み ちょっとだけごめんね、とその空間に断って タバコに火をつけて ふぅーっと煙を吐き出した。 あたしより先に着くはずなのに、どうして遅刻? どっかのオンナに止められた?(まさかね) タメイキをつくと幸せが逃げますよ樹里さん、 と言ったあの子。 あなたがちょっとだけうらやましい。 携帯が彼の到着を知らせる 遅れてゴメンね。今どこにいるの? どこって…駅ビルの…ああ、わかんないや 改札のほうに行くよ じゃあ入り口んとこまで来て また電話する わかった 土曜日だからか 人がすごくて こりゃ彼の背がいくら高くても 見つけんのは無理だと思った。 電話が来るのを待てばいいや。 ごめん 頭の上からあたしのダイスキな声がした。 電話するより先にあたしを見つけたらしい。 30分も遅れて目の前に現れたその人は あたしが前に色がきれいでカッコいい、といった ワインレッド色のシャツを着てた。 実は大変なことが起こったんだよ 何?どうしたの? …寝ちゃったの へ? 終点まで行っちゃったんだよ (笑)うっそ! ほんとにゴメンね…(笑)はいこれよろしくぅ 彼はジーパンのポケットに入れていたipodをいつもあたしに預ける…。 あたしは荷物が多くてきちきちのバッグに文句をいいながら入れる。 またあたしのmpioと絡まっちゃうじゃないのさ! ねー、なんで絡まるんだろうねそゆの。困るよねぇ? そうじゃないよ… ポケットにそのまま入れときゃいいじゃんってことなのに… と思いながらなんか「人質げっと」みたいな気分になる。 彼からそれを預かるたびに「ちょっとだけいい」気分になる。 「本物っぽい」気分になる。 一日限定…にせものの本物。 |
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