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| 2002年11月30日(土) |
「悪童日記」の感想(あらすじにふれているので未読の方は注意) |
アゴタ・クリストフの「悪童日記」読了。 何というか、すごい小説。 なんだなんだこれはああぁぁ・・・という感じで釘付け状態のまま、 半日で読んでしまった。
物語は一人称。双子の男の子によって語られている。 登場人物は、少ない。おばあちゃん、双子の男の子、双子の父母、兎っ子、兎っ子の母親、従卒、将校、司祭、女中、そんなところだろうか。 それらの人々は名前を与えられず、おばあちゃんはおばあちゃん(または魔女とも呼ばれている)兎っ子は兎っ子、女中は女中、従卒は従卒と書かれている。 舞台は東欧の小さな田舎町(これも具体的に名前を与えられていない)
とにかく淡々と物語が進んでいく。双子は大きな町から戦火を逃れ、おばあちゃんの家にやってくるのだが、そこでの生活は双子たちの想像を遥かに越えていた。 怪物じみたおばあちゃん、苛酷な労働、日増しに忍び寄ってくる戦争の足音、人々の憎悪、嘲り、醜悪さなど、酷い生活が双子を待っていた。 双子は生き抜くことを第1に考え、さまざまな訓練を行う。苦痛になれるためお互いの体を痛めつける、罵詈雑言になれるため汚い言葉をぶつけあう、ひもじさになれるために絶食する、動物を殺すのになれるため進んで鶏の喉をかき切り、鼠獲りにかかった鼠を煮立った鍋に入れて茹で殺す、などなど。そして生きていく為に必要な知識を自ら学び実践していく。 双子は純粋無垢であるがゆえに、世の中の不条理から自分自身を守ろうとする。
読みながら作者は双子をひとつの存在としてして捉えているのだなということが少しずつわかった。物語は一人称で語られているのだけど、どちらの双子が語っているのか具体的に示されていない。そこらへんからも、双子を一体化させようとする作者の意図がわかる。双子は、世の中の不条理や戦時下における人間の心理を浮きあがらせるための存在として書かれているように思った。
露骨な描写(それはありのままの真実を感じさせるものなのだけど)や醜さ汚らしさ、そういうものに馴染めない人には読めない小説かもしれない。 わたしにはたぶん、そういう悪童的な面があるのだろう。というか、自分の中にある醜い部分、汚い部分をある程度自覚しているのだろう。だから読めたし、共感することができたのではないかと思う。
「悪童日記」には続編がある。「証拠」という小説。 最後の最後に別れた双子の行きつく先がすごく気になっている。 ぜひ読んでみようと思う。
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