Opportunity knocks
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カポーティーの「叶えられた祈り」読了。 何というか・・読めば読むほどかなしくなるようなそんな小説。 物語的にはオースターの「ミスター・ヴァーティゴ」に少し似ている。 自分がいつ生まれたのかも知らず、両親が誰なのかもわからない孤独な男が主人公。男は小説家になる野望を持っているのだけど、その野望の激しさ、貪欲さゆえに徐々に身を滅ぼしていく。
本の帯に、この小説を発表したカポーティーは社交界を追われ、破滅へと向かっていった・・と書かれてある。カポーティーはこの小説の中で数多くの友人(NYで名前の知られた人々)を実名で登場させ、彼らのゴシップを小説に書いた。そのためカポーティーは社交界から無視され、ほとんどのセレブレティから相手にされなくなってしまった。
カポーティーは自分自身を、または自分をちやほやしてくれる一見親身な友達たちを信じすぎた。人の心はある日突然、ほんのささいなことで180度変ってしまうこともあるのだ。それでも、わたしはカポーティーの小説を読んでいろんな面で共感を持つことができた。親(愛する人)の関心を得たいが為、必死に自分をアピールしようとする子どもの切ない祈り、そんな純粋な気持が本の中に感じられる。永久に失われてしまったものを執拗に追い求め再び自分の手に取り戻そうとする気持、何だかよくわかるような気がした。
カポーティーは「叶えられた祈り」の「ラ・コート・バスク(第3章)」を書いたあと、小説に対するあまりの酷評と、友人達の予想もしない仕打ちにうちひしがれて続きを書けなくなってしまう。「ラ・コート・バスク」には、「まだ汚れてない怪獣(第1章)」のような集中力はなく、セレブレティのゴシップ話がえんえんと書かれている。投げやりな感じと、自分自身どうにもできない苛立ちや迷いみたいなものが感じられる。 書けなくなったカポーティーは徐々にドラッグやアルコールに依存するようになり、彼の周りに残っていた(良心的で本当に親身になって彼のことを考えてくれる)友人も、彼の奇行、才能の浪費、自己欺瞞、を目にするにつれ徐々に離れていった。そうして彼は59歳の若さで急逝してしまう。
読めば読むほどかなしくなるような本だったけど、それでもこの本を読んでよかったと思う。そしてトルーマン・カポーティという一人の小説家に対してこれまで以上に親密さを感じた気がしている。 次は、だいぶ前に読んだ「冷血」を読み返してから、処女長編である「遠い声、遠い部屋」を読んでみたいと思う。
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