Opportunity knocks
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2002年05月16日(木) そんな木曜日

今日は朝から電車に乗ってお仕事。
レセプトの訂正をしに、愛知県国民健康保険団体連合会館という所へ行ってきた。
受付で名前をいって中へ通されたのだが、ちらっとみた仕事風景はかなりすごかった。大きくて広い空間の中に何台もの机が並べられ、同じ制服(デザイン性のかけらもないような感じの無味乾燥な制服、しかもねずみ色)をきた女性社員がずらーと座って、一斉にレセプト用紙のチェックをしている。
BGMもなし、レセプト用紙をめくるしゃかしゃかという紙の音だけが響き渡っている。一つ一つのレセプトに目を通し、落ちはないか、点数は間違ってないか、適用欄には必要な記述があるか、などなど鵜の目鷹の目で調べているのだ。
かなり迫力があった・・。

担当の人から、今回ミスがあったレセプトを渡され、空いていた机に座って作業を始めた。15人程度の直しなのだけど、それだけでもかなり消耗した。間違っている点数に斜線をひき、訂正印を押し、正しい点数を書きこむ。そしてその患者さんのひと月分の点数を計算しなおして、合計欄のところも訂正する。
そして保険の種別ごとに集計された書類の方も訂正する。被保険者であるか被扶養者であるかによって訂正する箇所も違ってくるので、何度も確かめて正しい点数を書きこんでいく。
全部訂正しなおすまでに1時間もかかってしまった。
もちろんすごおおおく疲れた。
目はちかちかするし、こめかみは万力で挟まれたみたいに痛むし。

いいですね、ごくろうさまでした。
クールな女子社員にOKをだしてもらって、ようやく解放された。
でも、つくづく女ってえらい、と思った。あんな仕事、絶対男にはできないだろうと思う。ある種の我慢強さ、冷静さ、観察力など、数をこなしていくうちにある程度は養われていくものかもしれないが、ほんとうにすごいと思った。
わたしにはとてもできない。


消耗したアタマを抱えたまま帰るのは嫌だったので、少し街中でぶらぶらすることにした。よくいく手作りのバーガー屋で、サーモンととクリームチーズのベーグルサンドをたべたあと、某美術館でやっていた山本容子さんの美術展を見に行った。

山本容子さんの絵は、トルーマン・カポーティーの「クリスマスの思い出」という本の中で、はじめてみた。素敵だった。ひとめみて好きになった。
くっきりした鋭角的な線と柔らかい色彩、それまで銅版画には何の興味もなかったけど、彼女の絵をみて銅版画の良さに魅了されてしまった。

美術展には彼女が彫った銅版の原版も展示されていた。銅版には大きく分けて2種類の手法があって、1つは彫刻刀で手工的に彫った彫刻銅版というもの、もう1つは腐食銅版といって、銅版の上に蝋などを塗ってその上からニードルなどで彫り、その部分に硝酸を注いで腐食させて作る手法がある。
展示されていたのはたぶん腐食銅版の方だったと思う。
ひとつひとつの線が丁寧に書きこまれて、ひとつの雰囲気を作り出していた。

展示の最後の方で、山本さん自身が創作している様子を撮影したビデオが上映されていたので、椅子に座りながらぼんやりと眺めた。真摯に筆(じゃなくてこの場合ニードルとか彫刻刀だけど)を運ぶ山本さんの指先をみていたら、さっきまでの妙な倦怠感がどこかへ消えて、クールな緊張感で満たされていくような気がした。
素晴らしいな、と思った。

そんな感じで、疲れたり満たされたり忙しい1日だったけど、いろんなことをまた見つけた1日だった。小確幸


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