Opportunity knocks
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「ガープの世界」読了。 アーヴィングは小説を書こうとする時、最初にラストの部分を決定するらしい。 結末を見据えてから出だしを考え、内容をふくらませる、という流れで執筆するのだそう。 「ガープの世界」にあてはめてみると、「ガープの世界にあっては、我々はひとり残らず死に至る病をおった存在である」という文章から執筆がはじまったことになる。 それを何かで読んで、すごく納得した憶えがある。 アーヴィングの小説っていつも、最後はそこに行きつくんだなという 収束感みたいなものがきちんとあるから。 読み終わった後、それが傍目にとてもハッピー・エンドとはいえないような結末でも、何となくこれでいいんだ、これしかなかったんだって、そう思える。 最初にガープ〜を読み終わったときもそう思った。 妙に穏やかで静かな気持ち。
アーヴィングの小説は陰鬱で暴力的で暗くて露骨だという人は多い。 でも、逆にそういうものを全面に書く事で、非暴力の重要さや必要性みたいなものを強く感じる事ができるのではないかと思う。 少なくともアーヴィングは暴力そのものを書きたいのではなくて、その裏側にある魂の平穏みたいなものに、常に目を向けて書いているのだと、わたしは思う。
アーヴィングから少し離れているうちに、オースターやトニ・モリスン、 グレイス・ペイリーなどを読み始めたのだけど、オースターとアーヴィングを比べてみると、アーヴィングはやはり今の文学の指向からはあえて外れた道を進んで いってるなあという感じがすごくした。 頑ななまでにそれを目指してる、というわけでもないと思うのだけど、それがアーヴィングなりの書き方なのかもしれない。そしてそれがアーヴィングのアーヴィングしか持ちえない良さにもなっているのだと思う。
アーヴィングの小説は「オウエンのために祈りを」以来少し遠ざかっていたけど、 これを機に、新作「サーカスの息子」(だったけな)にも手を伸ばしてみようかな と思う。またあらたな良さを発見できると良いなあ。
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