TOI,TOI,TOI!


2004年04月11日(日) マタイ


ドイツに帰ってきての初仕事、バッハのマタイ受難曲のコンサートが終わった。

実は私がマタイを弾いたのは今回が初めて。

『シンフォニエッタ・フランクフルト』という名のこのアンサンブルは、リーダーであるブッフベルガー先生が自らの手によって組織し、指揮したりコンマスをやったりする。今回は彼がコンマス。

私は今まで人が「マタイっていいよね」なんて言ってても、いや、私ははっきり言ってよく分からないと思っていた。
今回、マライケに(彼女も今回のメンバー)、歌詞をはじめから終わりまで全部解説してもらい、やっと少し見えた。マタイという人が書いたシナリオが。

ちなみにバッハは、聖書を書いた4人それぞれのシナリオに曲をつけたらしい。そのうちでヨハネとマタイだけが有名だ。

聖書というものは最も古い本であるわけだけど、その聖書を書いた人たちは本当のことを書けなかったのだ、という。ある友人(ドイツ人)によると。

イエスだけが十字架にかけられたのではなく、当時は一日に何人もの人が十字架にかけられて死んだのだそうだ。
ローマ人というのが勢力を振るっていたわけで、聖書を書いた4人も、もし本当のことを書いたらあっという間に十字架だったはずだ、と。だから聖書にはユダを悪者にして書くことにした、という。

う〜む。

太平洋戦争だってなんだって、元をたどれば根本はそこから来ているのだと、その友人は言う。聖書に書かれたことと、聖書に書かれなかった事実との間で。

たとえば、ワーグナーはユダヤ人が大嫌いだったというのは知られている話だけど、それはただただ精神的に嫌いだったのであって、ユダヤ人に何かされたわけでも恨みがあるわけでもなかったはずだ。

う〜む。

とにかくマタイは聖書によるものなのだ。
聖書の話についての感想を本番後皆で話したりした。それにしてもユダは、なんでお金なんかにつられたんだろうか。そんなに大金だったのだろうか。
あとで、大後悔してお金を投げ捨て、「イエスを返してくれ」という場面は、私達のグループ(2オケのバイオリン6人)のお気に入りであり、どうしても悲劇的には弾けないト長調の曲であった。


今月もうひとつシンフォニエッタの本番があるので、今はそれにかかっている。今度はシェーンベルクの室内交響曲(作品9)という曲で、ブッフベルガー指揮、私はコンミス。




  
 目次へ