skajaの日記
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2007年04月06日(金) 『生まれる森』

また買ってしまいました。島本理生の『生まれる森』。ついにハードカバー。
「プリングルスを全種類食べきらないと気がすまない」状態に近いです。半分中毒です。
彼女の小説はどれも同じトーンで書かれていて、少しずつかぶったりずらしたりしながら同じテーマの歌を繰り返し歌い続ける歌手の歌を聴いているみたいな気分になる。

で、『生まれる森』です。
「苦しさから抜け出せずにいる男性を救えると思っていたけど、無理だった。私はまだ子どもだった。」という内容が、『ナラタージュ』にも『シルエット』にも似ているね。
この3つは3姉妹みたいな作品だと思う。
サイトウに惹かれていく過程があまり丁寧にかかれず、サイトウさんと過ごした日々自体ほんのちょっぴり断片的にしか書かれていないので、どうして失恋してそんなに壊れちゃったのかはあんまり良くわからない。
壊れちゃった結果の行動を書くことで、彼女の思いの深さを書こうとしたのかな。
それがいいとか悪いとかではなく、「詳しくは書かれないけれど、こんなセリフが出てきたってことは過去にこんなことがあったらしい」と読者に判断させてさらっと通り過ぎてしまうのは、映画の描写に似ているなと思いました。
雪生さんのお母さんのエピソードなんかもそう。「作者は事情がわかっているのだろうが読者に書いて説明しないのは不親切」って批評もあるみたいだけど。
彼女はその瞬間に主人公が思ったことや情景は丁寧に書くけれど、過去のことに関しては詳しく触れようとしない。
なんだろう。言葉で綴る小説よ呼んでいるのに映画を見ているような気分で、私はそんな雰囲気がけっこう好きでした。
あとひとつ、よく分からなくなったのが時間の感覚。サイトウさんと長い間付き合ってたような錯覚に陥るけど、期間としてはたぶん受験前の2〜3ヶ月の話。
その後大学受験をしながら複数の男性と付き合った…ということだろうか。
話が行ったり来たりするのでちょっと混乱してきます。

思い出したことが一つ。
私が小学校から高校まで通った個人塾の塾長は、高校生だった女子生徒と付き合って、彼女は妊娠して大学進学を諦めて結婚して子ども産んで育ててたよなぁ。
子どもだったからか、リアルに考える能力がなかったからか、あらすごいわね、くらいの反応でまぁそんな人生もありかなと思ってた。
別に親たちも表立ってはなんにも言ってなかったし。第一、自分の子どもたちをその塾に通わせてた。ずいぶん大らかだなぁ。
今思うと塾長という立場で思い切ったことをしてたんですね。
でもサイトウさんと比べると、あの塾長の取った行動の方がずっとストレートで前向きでなにより彼女の気持ちにちゃんと応えてると思う(かなり軽率だけどな)。


skaja

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