水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
2004年11月13日(土) |
連城三紀彦『過去からの声』 |
独特の叙情感たっぷりで、胸がしめつけられていく過程がたまりません。 先月読んだ『桐の柩(ひつぎ)』(「わかれの船」収録・光文社文庫)同様、 しくしく泣いているような文章で、その向こうに、今にも零れ落ちそうな 涙をためた主人公が、こちらを見ているみたいなんです。
主人公は元刑事。刑事を辞めた一年後に、先輩刑事に辞職の理由を 告白する形で始まります。きっかけになった誘拐事件を絡めながら。
フィクションだと割り切って読むにはいいんですが、現実的には、ちょっと 問題じゃないですか?刑事なら、事件の解決に対して、一般の人以上に 真摯な態度で臨むべきだと思うんですが、、、いいのかなぁ……。 若い刑事なら正義感もあり、そんなことはしないのでは。。。 先輩刑事を庇う理由が、やや弱いような印象が残ります。 でも、そこが、若い刑事の繊細さを際立たせているのかもしれませんね。
過去つながりで思い出すのは、坂東眞砂子の『白い過去』(「ゆがんだ闇」 収録・角川ホラー文庫・2002.1.19記)と宮部みゆきの『過去のない手帳』 (「人質カノン」収録・文春文庫・2001.12.8記)。どちらも、考えさせられます。
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