水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
2004年01月18日(日) |
篠田節子『失われた二本の指へ』 |
幸せそうに見えて、不幸せな人と、不幸せに見えて、実は幸せな人がいる。 仲良さそうに見えて、つめたい関係の夫婦がいれば、ケンカばかりしていても、 愛情と信頼の絆で強く結ばれている夫婦もいる。本当の気持ちなんて、本人に しかわからない。暴力を振るう夫を持つ妻は、不幸か?そんな男とは、早く別れろ と他人は考えるかもしれない。なんで、そんな暴力的な男がいいんだ、と他人は 不思議に思うだろう。殴られても、その男がいいという女もいるのだ。男女の絆の 不条理は他人にはわからないのである。
と、せつせつと訴えたくなるような『失われた二本の指へ』。 福祉事務所で働くケースワーカーが、仕事で訪問した家で、かつて一緒に仕事 をした女性と再会して、その環境から救おうとするのですが──。 ケースワーカーの職責の重さは想像以上です。
篠田節子の短編は、ストーリーテラーとしてのSF的なものと、男女のドロドロな 愛憎劇なものがあり、どちらも面白いですけど、愛憎劇の方は、もーぐいぐい 引き込まれていきます。愛がさめたあとも不倫関係を続ける男女の苦しみを 描いた『秋草』(「らせん階段 ─ 女流ミステリー傑作選」ハルキ文庫、2003.06 05記)には、引きずり込まれました。 愛と憎しみは表裏一体。。こわ。
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