水野の図書室
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2003年10月24日(金) 田辺聖子『お茶が熱くてのめません』

けやき通りは秋も深まり、燃えるような美しさです。朝晩肌寒くなりました。
晩秋の気配に人恋しくて、せつない恋物語を本屋さんで探すこと十分。
こんなときは、田辺聖子でしょう。と、「ジョゼと虎と魚たち」(角川文庫)を発見!
まもなく公開の映画「ジョゼと虎と魚たち」の原作です。犬童一心監督、渡辺あや
脚本、妻夫木聡&池脇千鶴主演、音楽・くるり、です。観る前に読んでおくのも
いいですよ。

表題作の他に八編も収録の贅沢さ!この一冊で読書タイムがキラリ度アップ
間違いなしの予感です。

最初の作品は『お茶が熱くてのめません』。
七年ぶりに会った昔の恋人。事業に失敗し妻子に出て行かれた男と対照的に、
女は独身のまま、脚本家としての道を歩み始めていました。面変わりして老けた
昔の恋人が女に話したことは──。

はぁ〜@@、そ、そんなぁ〜、男としてダメダメですねー。引いちゃいますよ。
昔の恋人には、それなりに素敵に歳を重ねていてほしいです。仕事が順調で
なくても(ビジョンがあれば)、離婚していても(恋をしていたら)、知性と色気が
漂うんじゃないでしょうか。

かつて愛した女を目の前にして、呼び方に戸惑う男心と、愛した男だからこそ
その心模様がわかってしまい、もどかしい女心が絶妙に絡み合って、こちらも
せつなくてせつなくて。。。苦手な大阪弁のセリフも、田辺聖子の手にかかると、
不思議としっくりきて、人間味あふれる憎めない男ができあがりました。

何を言いたいのかわからなかったタイトルは、読み終えて振り返れば、これほど
ぴったりなタイトルはなく、どうしていいのかわからない女の心情そのもの。
そして、胸の奥をチクリと刺す痛みは心地良く・・。


水野はるか |MAIL
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