2004年02月15日(日) |
Emergency! /TOKUZO review |
芳垣作曲の醍醐味を見せる「re-boptism」を幕開けに、壮絶なまでに美しいローランド・カークの「溢れ出る涙」、すごい「Sing、Sing、Sing」、存分に泣かせるバカラックの「The Look of Love」、アンコールにはこんなに凄くてかっこよくて笑えるの、聴いたことがないという「Mack The Knife」。 様々な活動を続けるドラマー、芳垣安洋による新ユニット、「Emergency!」。このバンドにおける芳垣氏の「Jazz」の3原則は「Swing」「男気」「サイケ」だそうである。 水谷浩章のベースは「Swing」だった。その確かなリズムの上でとびきり楽しそうに音を叩き付け、遊ばせる、メリハリ効いた芳垣の姿は、まさに男気が溢れてる。そして両翼に構える、異なった温度差のギタリスト、斎藤良一と大友良英の音は「サイケ」だった。音がハレーションを起こしながらも、どこか計算づくのような研ぎすまされ方をしている。 しかしだ。かつて私の中では「Jazz」「Swing」「サイケ」という言葉は、何がしかのイメージを伴って自分の中できちんと腑に落ちたものとなっていた筈だった。ところが、この「Emergency!」のライブに触れた途端、その言葉の意味するものが、もはやわからなくなってしまった。「インフォームド・コンセンサス」だとか「リスペクトしてリコメンディッドする」という言葉同様、輪郭がぼやけ、色だけがあって形が見えない言葉と化してしまったのである。だから私は語る言葉をなくしてしまった。 ただ一つ言えるのは、Jazzにこだわる人、好きな人、演っている人には、すべからくこの場で共に聴いて欲しいと切実に感じたことである。「Emergency!」がJazzの地平線に燦然と現れた、一つの巨大な地点であると思ったからだ。 「Jazz」が生まれた時、初めてそれを聞いた人はぶったまげたかもしれない。そして今、私も「Emergency!」のライブで、多分それと同じようなぶったまげ方をしてしまった。空いた口は塞がらず、目から鱗。言葉を失ったまま、身は新たなJazzの胎動に激しく捩れてしまったのだ。
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