日記病者

For God so loved the world that He gave His only begotten Son,
that whoever believes in Him should not perish but have everlasting life.
John 3:16




2005年06月22日(水) 改めて冥福を祈る 張國榮

寝付かれず夜中にネットしていたら、たまたまレスリー・チャンに出会った。
検索に引っかかる記事を頭から読んでいって、そういえば彼は既にいないのだ、と
もう知っていた筈のことに、改めて気付かされた。
彼が逝去したのが2003年のことで、それからもう2年が経ってしまった。
時が経つのは早すぎる。
2年経ったからって、何だというんだろうか。
亡くなった人が返ってくる訳でもなく、失った衝撃は和らいでいくように見えても、
またさっきのように改めて不在を認識したとき、やるせない涙を流すのは変わらない。
なのに時間が経てば経つほど、彼のことを「過去の人」にしてしまう。
今生きている人間だけが偉いんだろうか。
悔しくてたまらなくて、夜中だというのに一人で大泣きしてしまった。
時間の流れという自然の摂理に対して私が憤ったって、彼への供養にはならないのに。

レスリーを知ったのは、母の友人のレスリーファンから借りた
「さらば、我が愛〜覇王別姫」のビデオがきっかけだった。
中学2年生くらいだったかと思うが、初めはあんまり乗り気じゃなかった。
でも知らない相手じゃないし、借りたからには見ないとなぁ……くらいのつもりで見た。
レスリーは主演で、京劇の女形を演じていたのだが、最初の数十分までは
「やっぱ化粧してても骨格が男だよねー。なんか違和感がある」
とぶすぶす言っていたのに、クライマックスはテレビにかじりついて号泣していた。
クライマックスどころじゃない、もう中盤辺りからレスリー演じる蝶衣に感情移入して
どうしても彼を振り向かない痴れ者、段小樓に大激怒していたものだった。
女っぽいとか、女装が似合うとか、そういう次元ではなくて
こんなに素敵な人がいるのか、言葉を尽くしても表現出来ぬ魅力を持つ人がいるのかと
妙に感動して映画を見終わって以来、すっかり彼にハマってしまったのだった。
まだ当時は中学生だったので頻繁にビデオを借りることも出来ず、
それでもたまにビデオ屋さんに行っては、うんうん悩んで彼のビデオを一本借りた。
店頭に並んでいるものなら大抵見たと思うのだが、中でも
「ブエノスアイレス」は映像も美しかったし、
私の大好きなピアソラの曲も使われてるしで、大のお気に入りである。
「覇王別姫」の蝶衣とは違った健気さを持つ役でした。
共演のトニー・レオンがこれまた男前でさぁ! ほんっとに格好いいんだ。
ここで挙げた二作品だけで誤解を招くといかんので申しますが、
レスリーの出演作品は同性愛を扱った映画だけではないですよ。
というか、そんなの極一部ですよ。ここに挙げた二つくらいじゃないんかね?
他にも山ほど出演作品はあって、素敵な作品は多いです。
主演ではないけど「男たちの挽歌」とか素敵ですねぇ。泣いて目が腫れた。
但し、これはシリーズ化してるけど、お勧めできるのは最初の一本くらいです。
2作目までは見たけどつまらなかったので以降作品は見なかった。
でも1作目はヤバイくらいにいい。チョウ・ユンファ格好いいしね。

書いてたらまた見たくなってきたので、近日中にビデオ屋さんに走るつもりです。
こうしていつでもビデオを通して見ることが出来るから、
余計に彼がもうこの世にはいないのだということを忘れそうになってしまう。
そのうち、忘れた頃にまたひょっと新作映画を出してくれるのじゃないか、とか
来日して私たちの目の前に姿を見せてくれるんじゃないか、とか期待してしまう。
期待した後で事実を思い出して、虚しくなる。決して実現しないのだ。
実現しなくたっていいから、何処かで元気に生きていてくれるなら良かった。
何処か遠い地で幸せを感じてくれているならそれで良かった。
彼は生きることから解放されて今、幸せを感じているのだろうか。

死の前、どれほど前からかは知らないけれど、彼も鬱病に悩んでいたという。
この人のためにも死ねない、と思う人はいなかったのだろうか。
それとも、そんな人がいても尚、死を選ぶしかないほど苦しかったのだろうか。
哀しいかな、人の苦しみは結局その人自身にしか分からない。
どうしたって他人と共有することは出来ない。優秀な精神科医でさえ出来ない。
どれほど言葉を尽くして自分の痛みを伝えても、全て分かり合うことなど出来ない。
だから自分の力で戦うしかない。
周りから助けてあげることは出来るけど、代わりに戦ってあげることは出来ない。
死を選ぶことは、試合放棄ではないと思う。
そういう形で決着をつけるなら、それはそれでいいのだと思う。
残された者はどうするんだ、と言われるけれど、それじゃあ頑張って生きたとして
残された筈の者が代わりにこの生を担ってくれるというんだろうか。
幼い我が子を残して死ぬ、という場合の責任問題はこれとは別の問題だ。

今となってはただ、彼の魂の安からんことを願うだけだけど、
もし時間を越えて願うことが出来るなら、
どうか死の瞬間、彼に恐怖がありませんでしたように。
安らかな気持ちで死を迎えることが出来ましたように。
慌しかった一生を終えて、今レスリーが幸せに笑っていられるならいいと思う。


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東風 [MAIL]

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