私的正論。

2002年07月17日(水) 自ら進んで駄目に育ったわけでもあるまいに。

虐待事件の判決。

したり顔で誰もが、信じられないと言うている。
信じられなくて良かったな。幸せだな。

責めはすまいヨ。気の毒に。信じられない世界の出来事で、さぞおっかねェだろ。

けど大丈夫。怖がることなんぞ何もねェ。あんたには関係ねー世界のこと。

虐待なんてもんは密室で起こることだから。
あんたには関係ねー世界のこと。

ただくれぐれも連れ子で再婚するときゃ気を付けろって話。







あるいは貧乏人の家にゃ産まれてくんな、て話。

どっちみちあんたには関係のねー話。

関係ねーんだから黙っとけ、ちゅうのは極論か。極論だ。

けどな。

誰でも進んで駄目に育ったわけでもあるまいさ。想像力がカケラでもあんなら想像してみ。




実の親に殴られ蹴られ髪を焼かれ。
盗みをさせられ辱められボロ着を着せられ。

それでもソンゲンとやらリセイとやらを残して育つためにゃ何が必要?




不幸な人間は不幸な人間と出会い不幸な家庭に落ち着くもんで。

偉いサンはヨ。その連鎖を止めろて言うがヨ。

そんなら不幸な人間と幸福な人間と。どうやって出会う? 惹かれ合う?
不可能だろ?

バカが利口と出会ってバカでなくなる確率は何パーセント?

なあ。その賢い頭でケーサンしてくれよ。




バカは利口を利口と思わないからバカなんだろ。
利口で無難な人間よか。バカなクズ野郎のセックスに溺れちまうからバカなんだろ。

連鎖が止められるかよ。






止められるもんなら止めてみろ。

止められるかよ。

アイロンのかかった清潔な白いシーツの上で眠る人間の、語る理想なんてもんに。







止められるかよ。

ああ。桜木にだって止められねーと思う。




桜木は、ただ、ここを止めることしか出来ねーからさ。

ただ。目の前に居る小僧っこの瞳を曇らせねーようにしか。出来ねーから。




てめえがどんな汚れたシャツでガッコに通ってたか。
てめえがどんな捻れたモラルを本気で信じて生きてたかなんてことを。

全部後ろ手に隠して笑って見せている。心配すんな。お前の心は真っ白。



大の大人がヨ。

泣きそになりながら見送っている。天真爛漫な小さな背中。




そこに至る道をくれたのは。
かすかな良心。かろうじて与えられた感性と挫けなさの遺伝子と。


ある日見た美しい空。






泥だらけのてめえの手の平を憎まず。

笑いさざめく街角を憎まず。同じ高さで人を信じようと生き直す勇気を。




誰がくれたのか、なんてのは、忘れちまった。

時々「あなたは傲慢だ」という奴が居て笑うよ。



「誰でも自分と同じ様に出来ると言うのは、それは傲慢ですよ」とヨ。



そうか。傲慢か。

けど。卑屈にはなれねーのよ。

あんまりハマっちまうもんだから。死んでも。

卑屈には、なれねェの。








なあ。

虐待のニュース見たら。
想像できる人には、してほしい。





人の心の「信じられねーまでの踏みにじられ方」と。

ついぞ照らされなかった小さな影が。
どれほど世間を憎んだか。
どれほど世間を知らずに生きたかってことを。

想像してみてほしいんだよ。










信じられない、てのは。言葉が違う。

想像出来ないと。


言い直せ。


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桜木



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