こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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2012年04月06日(金) |
吉田サス劇【夏美】(第2部)第19話『チャットという世界』 |
吉田サス劇【夏美】(第2部) 第19話『チャットという世界』
自分の名前と どんな相手と話したいか入力し ただひたすら待つ
好みが一致していれば 女性が入ってきて話ができる
仲良くなればメールアドレスを交換
さらに進展すれば 実際に会って関係を持つことができる
【チャット】と呼ばれる世界は ケータイやPCを媒体として 見知らぬ者同士が 通常ではありえない距離感であっても 出会うことができる
ここでいう【距離感】とは 実際に住んでいる場所の距離だけでなく 年齢にも当てはまる
さらには 顔も素性もわからないため いか様にも自分を飾ることができる
俺が誰か知る者はいない
俺の過去を知る者はいない
俺の現実を知る者はいない
俺は
俺はこの世界で
俺でいる必要がない
女が喜ぶような
女が喰いつくような
女が満足するような男でいればいい
自分がどんな人間であるかを どんな身分の人間であるかを 知っているからこそ
たどり着くことのできない 理想の男性像を描き 見え透いたウソを塗り重ねた
一時の快楽を得るために
ただ長くは続かなかった
ウソを塗り重ねは この仮想現実において誰もが考えし得ること
誰だって楽して女性と付き合いたい
この世界で 男はセックスのためなら どんなウソでも塗り重ねる
誰もが同じことをするので 競争率は高く 女性を獲得する確率は 現実の自分とそう変わらなかった
なにか違う方法で 女性を引き付け おびき寄せるしかない
そして【ある方法】で 女性をおびき寄せることに成功した俺は 都内に住む35歳の主婦と親しくなった
交わるはずのない糸はそのとき結びついた
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