こしおれ文々(吉田ぶんしょう)

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2012年04月04日(水) 吉田サス劇【夏美】(第2部)第17話『2年の月日、似た生き物、開けた扉』




吉田サス劇【夏美】(第2部)
第17話『2年の月日、似た生き物、開けた扉』



俺の最大の短所は
かっこ良くないというより
かっこ悪すぎないことだろう


黙っていて女の子にもてるほど恵まれず
女の子のいない青春を諦めるほど
かっこわるいわけでもない。



良い意味でも悪い意味でも一番になれない



だから
高校生の頃から思い描く華やかな青春、
キャンパスライフの謳歌を
捨てきれないでいるのだろう



そんな俺がたどりついた
手っ取り早く女の子と仲良くなる方法は
ご飯をおごり、
誕生日でもないのにプレゼントをすることだった。



そうすれば二人っきりになるきっかけは生まれ
10回に1回は【その後】に結びつく


金はかかるし確率も低いが
そうでもしなきゃ楽しい大学生活は成り立たない



不思議なもので、
こういう俺と友達になるのは
やはり似たような人間で
男の俺が見たって女の子にもてそうに見えない。


見た目どころか性格までドングリの背比べ


多少明るいか、多少暗いかのどちらかである。


彼女が欲しい・・・というか
定期的に性欲を満たしたい
満たしたいけどなかなか満たせない


悩みまで似てるため
自分もこんな風に見えるのかと思うと
本当にガッカリすることがある


それでもほかに友達がいないため、
俺は自分に似た生き物と同じ時間を過ごす


気がつけば2年の月日は流れていた


都会に目新しい【モノ】がなくなってきた頃
俺自身には何も残っていなかった


身近にあるのは
【友人】という自分に似た生き物と
消費者金融から借りた金


その金も昨日まではもう少し多かったのだが
時間つぶしに入ったスロットに半分くらい吸い取られた


大学にもしばらく顔を出していない


自分自身が腐りかけていることに気づいていても
それをなんとかしようという気持ちがない



そして今日もいつもと変わらない一日のはじまった



昨晩の酒の臭いを感じつつ、
空腹を満たすために牛丼屋に入る


牛丼を待っている間
何気なくいじったケータイが俺の運命を大きく変えることになる。



軽い気持ちで開けた扉は俺を【ある世界】へと導いた



全ての始まりはここだったのか
それとも【夏美】と出会うまで何も始まっていなかったのか


どちらにしろ
俺が俺のままであれば
金属バットで殴られずに済んだのかもしれない。


死なずに済んだのかもしれない。



管理人:吉田むらさき

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