こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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2012年03月12日(月) |
吉田サスペンス劇場【夏美】第1話『赤色の光』 |
この世に神様のような存在があり 全ての人生が彼の手により導かれた【運命】であるなら 私は彼に神ではなく映画監督を職業として勧めるだろう
様々な人間と様々な欲望・・・
偶然の中で必然的に交わり合い 必然の中で偶然的な結果が導かれた
【運命】という言葉で片づけられることなのか
いや・・・ 【運命】なんて 人間の自分勝手な責任逃れでしかない
【運命】という陳腐な小説があるならば 尊き生命を彼自身が軽視することになる
【運命】なんてない
だからのこそ 私はこの事件を生涯忘れることはないだろう
数年後には 誰もが忘れるであろうこの事件を・・・
吉田サスペンス劇場【夏美】 第1話『赤色の光』
都内に住む35才の主婦が 死体となって発見されたのは3ヶ月前のこと。
さらにその1週間前、 隣県に住む21才の大学生が何者かに殺された事件。
2つの事件は 当初まったく関係性がないものと見られていた。
というより、 この国における事件の発生頻度から見て たとえ隣県で同時期に死体が発見されたとしても、 まったく不思議なことではない。
管轄も違うため、 それぞれに捜査本部が立ち上げられ それぞれ捜査が進められていく。
主婦の死体に関しては 形式的に、自殺・他殺の両面から捜査することとしているが、 遺書もあり自殺と見て間違いはないだろう。
仮に自殺に至った経緯が明らかにならなかったとしても、 半年もすれば捜査がうち切られることは分かり切っていた。
意味もなく人生に落胆し、成り行きで自殺するケースは多々ある。 不可解な自殺を念入りに捜査するほど、 犯罪都市東京を管轄する警察はヒマではないのである。
しかし・・・ 捜査が進むにつれ、 次第に【糸】は見え始める。
普段は目に見えない赤外線が タバコの煙の中ではその存在をしっかりと示すかのように、 神々しい赤色の光は 確かに二人の人間を結びつけていた。
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