愛より淡く
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昨日、夫が買ってきたヒラタケというキノコを入れて、スープを作った。
しかし、このヒラタケ、煮るごとに、腐った漢方薬みたいな、なんともいえない強烈に変な匂いを放った。
私は、その匂いで、気分が悪くなり、吐き気を催してしまったくらいだ。
こんな変なにおいのスープ作っても、子供らに文句言われるし、きっと誰も食べない。
と、思って、慌てて、ヒラタケだけを取り出して、もう一度作り直した。
じゃっかん、ヒラタケの匂いは残っているものの、まあ、気にならない程度になった。
夫は、鈍感なので、なあに、ヒラタケがほとんど入ってなくても気づかないだろうと、タカを括っていたのだけど。
昨日に限って、夕食の時、いそいそと鍋のフタをあけて、自ら、スープをつごうとした。
ま、まずいかも。
と、一瞬、嫌な予感が頭をかすめた。
「アレ?ヒラタケは?どこにもないぞ。どうしたんだ。どこやったんだヒラタケ」
「あのな、これこれこうで、めちゃめちゃくさかったんで捨てた」
と、かいつまんで説明した。
私の説明が終わるか終わらないうちに、 モーレツに怒った夫が、私に殴りかかってきた。
「なんで捨てるんだ。ヒラタケだけを楽しみに、帰ってきたのに」
「せやけど、ほんま変な匂いがして、くさってると思ったんやもん」
防御体制に入りながら、弁解したけど、後頭部に一撃をくらってしまった。
手加減しているとは思うけど、それなりに痛かった。
「痛いやんか、なにすんのん」
と、頭に来たので、殴りかえしたった。
(中略)
なんだかねえ。
ヒラタケで、こんなに争うとは思ってもみなかった。
もう、すっかりヒラタケトラウマ。
でも、私は、間違っていない!!。 あのまま、スープにヒラタケを入れたままだったら、とんでもなくまずいスープになっていたに違いないのだ。 私のとっさの判断は正しかった。
おかげで、子供らは、おいしい、おいしい、と喜んで食べてくれたし。
で、夕食も終わり、一段落した後。
いつものようにソファーに寝転がりながらウトウトしはじめた夫を見て、私は、無性に、耳元で囁きたくなる。という衝動にかられた。
で、囁いてみた。
そーっと耳元に近づいて
「ヒ・ラ・タ・ケは、まずい。ヒラタケは、まずい。」
なんでもウトウトしているときの人間は、暗示にかかりやすいと聞いたことがあるので、試してみたい。というのもあった。
そしたら、そしたら、寝ながらしっかり言い返されてしまったではないか!
「ヒラタケは、まずない。ヒラタケは、まずない。」
しっかり聞いていたようだ。
がっかり。
おわり。
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