甘い煙
頭出し|巻戻し|早送り
最近の本筋から逸れて、少し前の話。
あの子は、ものすごく処女性を求める子だった。 あと、高校生みたいにまっすぐだった。思考の深浅も、欲望も。 かわいかったけれど、アンバランスなところがこわかった。 とても優しかったし、彼なりに努力してくれて好ましく感じることもあったけれど、時に自分を殺して抑圧しているのが透けて見えていたから。 私が彼の思っている枠内に収まってうまくいっている間は穏やかかもしれないけれど、破綻は目に見えていた。彼が私を自分のいいように捉えていたから。見たいところしか見ていなかったし、好きに私の形を変えていたから。 そこをはみ出して、彼の抑圧が解かれて噴き出したら、どうなるのか想像がつかなかった。
かわいかったし、想われて嬉しかったし、楽しい時もあったし、ドキドキしたし、先に進みたかったけれど、考えれば考えるほど、何もせずにごめんなさいを告げたことは間違いなく最良の選択だったと思う。 渦中にいた時も、それがいちばんいいと頭ではわかっていたけれど、そうするのは無理だと思っていた。近づきたい気持ちの強さと、道ができてしまったことに責任のようなものを感じていたことから。
それなのに現実にすることができたのは、あのひとと話せたからなんだ。 話せたタイミングが、決意して実行するのに直結するタイミングだった。 頭の中で、あの子を断ち切ることと直接明確につなげていたわけではないけれど、あの日、あのひとと話したいと、強く強く思っていた。
隠そうか言ってもいいか迷う過去はない方がいい。 良かった。
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