甘い煙
頭出し|巻戻し|早送り
今朝は雨。 いつもの電車に乗って会社に向かう。 電車は普段よりも混んでいて、始発の駅や途中の駅で時々少し長めに停車しながら進んでいた。
会社のある駅に着いて、降車の列が動くのを待っていたとき、左側の二の腕を軽くとんとんとされた。 ん?とそちらを向くと、 あのひとが、 いた。
いたの。
ごくごく微かな笑みを含んだような、無表情に近いような顔で。 目線がばちっとかみ合った。
「おかえりなさい!」と、いちばん最初に言いたかった言葉を言えた。 自分がどんな表情をしていたか覚えていないけれど、嬉しさはダイレクトに伝わったかな。
話をしながら、エレベーターに乗って、ロッカー室に向かう。 いまの私にとってはいっぱい話せたけれど、もっとたくさん話したいよ。 ものすごく限られた時間だと思うと、つい喋ったり質問したりしてしまうから、もっと彼のペースも感じながら言葉を交わしたい。
嬉しくて嬉しくて幸せで、緩む頬を引き締めるのが一日中大変だった。 だって嬉しすぎる。あのひとが私に気づいてあのひとから話しかけてくれたんだよ。 嬉しい。好きがあふれそう。口をついて出てしまいそう。
いつもは自転車のあのひとも、雨の日は電車かな、同じ電車になることもあったりするのかな、と考えたことはあった。 でも、あまり現実味を持たせずに夢想していたし、いつ戻ってくるかわからないので「きっと今日戻ってくる!」という期待はうっすらに止めておいているときだった。
嬉しい。幸せ。 あのひとが行動してくれたから、私も頑張る。
毎朝雨でもいいな。
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