リレー小説
たつほとえみるのリレー小説。

2007年05月14日(月) 1話

 この世界には、望みなどと言う甘い言葉は何もない。
 ただ其処に有るのは、絶望という言葉だけだった。

 記憶に残る、唯一幸せだったと言える日々。
 父がいて、母がいて。そうして幼い妹がいた。
 何もない、静かな日々。
 ただ森の奥で静かに暮らしていた。見つからぬよう。そう母は言っていた。何故、誰に見つかってはいけないのか。
 そんな事もわからぬままに、母の言葉を聞いて生きていた。

 そんなただ静かな日々。
 それを打ち壊した燃えさかる炎。
 父と母と、幼い妹と暮らした家が燃えていた。
 何がおこっていたのか分からなかった。母の逃げろと言う言葉だけが聞こえた。俺は闇雲に逃げた。
 幼い妹を連れて、何から逃れるのか分からぬままに、逃げた。
 俺の唯一の世界は燃え落ちたのだ。


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