この世界には、望みなどと言う甘い言葉は何もない。 ただ其処に有るのは、絶望という言葉だけだった。
記憶に残る、唯一幸せだったと言える日々。 父がいて、母がいて。そうして幼い妹がいた。 何もない、静かな日々。 ただ森の奥で静かに暮らしていた。見つからぬよう。そう母は言っていた。何故、誰に見つかってはいけないのか。 そんな事もわからぬままに、母の言葉を聞いて生きていた。
そんなただ静かな日々。 それを打ち壊した燃えさかる炎。 父と母と、幼い妹と暮らした家が燃えていた。 何がおこっていたのか分からなかった。母の逃げろと言う言葉だけが聞こえた。俺は闇雲に逃げた。 幼い妹を連れて、何から逃れるのか分からぬままに、逃げた。 俺の唯一の世界は燃え落ちたのだ。
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