小説集
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2007年09月01日(土) : seen 3=ロルフ・ボーマン
 

弟だと思っていた。
そして、ずっと思っていた。

だが、違った。
自分は皇帝のクローンである。
でも、デイブは…皇帝に寸部違わなく創られた繊維束の集まり 生命を持たないシステム・スタッフ。
だから扱いが違ったのか。

でも何故?
デイブは長命種に覚醒できる。
でも自分はそんな兆候はない。

クローンとシステム・スタッフとの作り方は違う。
自分は覚醒の部分が抜けてしまったのだろう。
でもデイブには…寸部違わず創られた存在だからか?

死んだとは思ってはいなかった。
だが、姿を現したデイブは自分を拒否した。
自分はずっと求めていた。弟が 真実を知った今でも弟と呼べる 戻って手をとってくれる事を。
しかし違った。
拒否
デイブは世界を全て憎んでいる。

銃弾が近くを貫通し、物思いにふけっていたラルフ・ボーマンは思考を断ち切られた。
今は考えている暇はない。
デイブが施していった耐長命種用呪術も、何度も侵入者を守るため発動し徐々に術も弱まったきている。
多分、デイブに重傷を負わされたのだろう、
短命種と違い、誇り高き長命種が人の血を求めこんな浅ましい姿になるとは。
幸いにもデイブが用意していった法儀礼済みのマガジンは沢山ある。
後は、ここは短命種の詰め所だ、朝が来れば日が差し込む。
長命種が灰に還る。
ただ、呪術が朝まで持てばの話だ。
なれない銃を撃ち、結界に入り込もうとする長命種を灰に還していく。

と、いきなり銃声が聞こえ結界内に入り込もうとしていた長命種達がたちまち灰に還っていった。
親衛隊別隊の人間は訳がわからず、バリケードの奥で顔を見合わせる。

と、服の腕に「FORTH 10」の腕章をつけた男たちが部屋へ乗り込んできた。
ロルフは銃を捨て、手を挙げ立ち上がる。
親衛隊別隊の最高責任者であるロルフの行動に、ほかの別隊の人間も同じように銃を捨て立ち上がる。
はじめに入ってきた男がGOのサインを出し、アンジェル軍最”凶”と言われるFORTH 10のメンバーが部屋へと入り込みくまなく探索し、何もないと銃を卸した。
「助かりました」
FORTH 10の誰もが驚き、一斉に声の主を見た
「デイブ…?」
 フランク・ミラーが思わず声を上げた。それも無理はない、声も姿もデイブそっくりの男が立っていた。…吸血鬼のデイブそっくりの 違うのは、短く刈り込んだ髪と目の色だけ。そのほかは、背の高さまでデイブと同じだった
「皇室親衛隊 別隊のロルフ・ボーマン大隊指揮官…あなたがたの階級で言うと ”少佐”にあたります。弟が、デイブがお世話になっていたようで?」
「デイブの?」
 前に聞いた事があった。デイブには兄がいて、憎んでいると。目の前にいる男は、デイブそっくりでも正反対の人物だった。




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Photo : Festina lente
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