こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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2012年04月18日(水) |
吉田サス劇【夏美】(第3部)第30話(最終回)『雑木林』 |
吉田サス劇【夏美】(第3部)
第30話(最終回)『雑木林』
事態は急変した
探し求めていた少女は 変わり果てた姿となって 私の前に現れた
後輩の捜査員の話はこうだ
都内から数十キロ離れた雑木林で 山菜を採っていた地元の男性が 2体の遺体を発見し警察へ通報
一部白骨化して 顔の判別は出来ないものの 歯形を警視庁のベータベースで検索し 少女と父親のものと一致したため うちの署に連絡が来ました
鑑識の結果では
その・・・。
後輩は説明をためらっていた
なんだ? なんか問題でもあるのか?
問題・・・ はい、明らかにこれは問題だと思います。
なんだよ もったいぶらずに教えてくれよ
わかりました・・・。
鑑識の結果を 後輩は渋々説明しはじめた
【運命】なんてない
様々な人間と様々な欲望・・・
偶然の中で必然的に交わり合い 必然の中で偶然的な結果が導かれる
【運命】という言葉で片づけられることなのか
【運命】なんてない
いや 仮にこの世に【運命】という事象があったにせよ
大学生と主婦の事件に限っては 【運命】とは言えない
全てが計算し尽くされ 全てが操り人形のように糸に繋がれ その中で人形はどう動くかを決められていた
それが神によって作られた 道筋なのであれば 【運命】と呼べるのかもしれないが
この事件は 運命と呼ぶほど神々しいものではない
【運命】ではなく 【完全犯罪】なのだから
後輩は言った
鑑識の結果ですけどね あの二つの遺体 死んでから確実に3カ月経っているそうです
はい そうです
彼女が警察署から自宅に戻ったのは 2週間前でしたね
わかりません
私たちが任意同行した少女は 一体誰でしょうね
吉田サスペンス劇場【夏美】
〜完〜
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