◆◇ お気楽観劇日記◇◆
公演やビデオなどを・・・見たまま、聞いたままを
つらつらと書き綴ったまたまた気楽なコーナーです。

2004年10月24日(日)  宙組バウ 『THE LAST PARTY〜S.Fitzgerald’s last day〜』

タニオカくん、宙組初の主演バウ。
宙組イチオシダンサーのともえちゃんも出るし、絶対見るぞ。
・・・と思っていたけど、なかなかチケット争奪戦が厳しくて・・・。
それでもラッキーにも初日を見ることができた。

タニオカくん・・・いったい、何組?
ウチ(星組)かと思ってた・・・みたいな感覚だった。

『華麗なるギャッツビー』の作者・・・。
いったい、どんな作品なんやろ・・・楽しいんやろか・・・真面目なんやろか。
それさえもわからずいたところへ「お芝居好きにはおもしろいかも。」
・・・そんな情報が入った・・・どうやら、少し重いらしい。

幕開き、タニオカくん扮するスコットと五峰さん扮するシーラ。
いや、スコットを演じる役者とシーラを演じる役者・・・という
いわゆる“劇中劇”今、まさにラストを演じるところ・・・という設定だった。

「劇中劇か〜。」と思ったのも束の間、劇中劇でもなんでもどうでもよくなった。
文章を書くこと、小説を書くことに夢を持ち、美人の妻を持ち、
あっという間に作品が売れ、大都会ニューヨークで夢のような生活が始まる。
そして享楽的な生活から、夫婦の不和、そして破滅・・・再起・・・そして死。
本当にスコットの人生を丸々演じていた。

誰がどう・・・とか言える作品ではなかった。
1部はどうもこうも救いようがないくらい重くて、重くてツラかった。
・・・いや、少々キツかった。
愛する妻・・・かなみちゃん演じるゼルダとのすれ違い。
理想と現実の葛藤・・・。人気作家・・・いや、トップを行く人が誰でも抱える・・・
自分に追いつき、追い越そうとするライバルたちへの焦り。

重くて重くて・・・しんどかった。
孤独におびえるかなみちゃんのゼルダ。
理想と現実の狭間で揺れ動き、心を蝕まれていく様子が手に取るようにわかった。
そして現実に苛まれるタニオカくんのスコット。
一流の作家になりたいという夢と希望と妻を愛したいという気持ちの中で
激しくぶつかりあい…盲目的になっていくさま。
刹那的な享楽に身を投じていく2人がとても痛々しかった。
それから2人を見守る美郷さん扮するマックス。
そんな2人をやるせない気持ちでずっと見守っている。

それぞれがリアリティに溢れていた。
かなみちゃん、ウマすぎる・・・。ぐいぐい引き込まれる。
引き込まれるからこそ、見ていてハラハラする。
「ゼルダ、そんなん、したらアカン。」そんな感じ。

重〜い、重〜い・・・そのまま1部は幕を下ろした。

「このまま重いんやろかー。」と重いながら、2部を迎える。
やはりスコットとゼルダと・・・そしてマックスのやるせないやりとりが続く。
だけど気がついたら、重さなんて感じず、食い入るように見てしまっていた。
ふいに涙が出た・・・泣けた・・・。

イチオシダンサーともえちゃんも時にはスコットの友人、失業者、
そして時にはターニングポイントになる学生・・・と他の出演者と一緒に
様々な登場人物になっていた。
ともえちゃんにも泣かされた。

気がついたら・・・ストーリーは終わっていた。
じんわりという気持ちでラストを迎え、やわらかい気持ちだった。
「3回くらい見たら、とても理解ができて、イイ作品かも・・・。」と思った。
最初の重さに耐えられるなら・・・だけど。

見終わった時、優しい気持ち・・・というのではなく、
喜怒哀楽・・・激しい喜怒哀楽と安らぎを見た感じで
本当にじんわり・・・としたホッとした気持ちだった。

月組ではどうなるんだろう・・・。
いや、その前にあと2回宙組を見る・・・。
どう気持ちが変わるんだろう・・・。



2004年10月19日(火)  星組新公 『花舞う長安』

この作品は本公演…1度しか見ていない。
おそらく…1度っきりになるだろう。
…いや、博多座で見た…だから2度になるのかなぁ。

ワタシ的にどうもしっくりいかない作品で…どうにもこうにも…。
でも新公は見ようと決めていた。

主演は本役を食う勢いのあるレオン。
  (↑本役に悪意なし…あくまでも勢い)
一体どんな玄宗になるんだろう……と思っていた。

では、またまた思いついた順に。

皇甫惟明・・・麻尋しゅん(真飛聖)
出番が多いわけではない。
コレといって何かポイントがあるワケでもない。
本役のうん太でさえも気の毒なくらいの出番の少なさ&書き込みの薄さの役。
どこか似た雰囲気のある麻尋ちゃん。
気がついたら登場していて、楊貴妃と牡丹の美しさを語り、
気がついたら「死んだ」と語られていた。
やはり、どうも気の毒な役だ。

李亀年・・・鶴美舞夕(麻尋しゅん)
今回、わりとおいしいほうの役かもしれない。
だけど、思ったよりも難しい役でもあると思う。
ぽっと出てきて歌を歌い、またまたぽっと出てきていつの間にか去る。
あまりにもあっという間過ぎて人物像や人となりを語るひまなんてない。
ようは“歌”である…でも難しい歌。
慣れが必要な役だなぁ…と思った。

寿王・・・夢乃聖夏(柚希礼音)
この人は気の毒だ…。(コレばっかりか?)
寿王自身が気の毒だ。
自分の父親に許嫁を奪われるんだから。
豪華な衣装に着られてしまうことなく、立ち姿も美しく
そして父王に対して少し憎悪と落胆を見せるところが細かかった。
…けど、もう少し“押し”が強くてもいいかもしれない。
これは本役にもいえるんだけど、ちょっとあっさり見えてしまう。

楊国忠・・・綺華れい(立樹遥)
いつの間にこんなに芝居がウマくなったんだろう、
いつの間にこんなに歌がウマくなったんだろう。
心からそう思った。
一人、本心から楊貴妃と皇帝のために尽くそうと……
命をかけようと思っている“イイ人”である。
その“イイ人”具合が…ただ1人あからさまに殺されてしまうラストと
重なって……哀しみが増す……はかない。
本役しいちゃんもそうだったけど、衣装がとてもよく似合う。
赤い甲冑も似合うし、宰相になったと報告に来る時の白黒の衣装もとても綺麗。

陳玄礼・・・彩海早矢(汐美真帆)
あやみんも……いつの間にか役者さんになっていた。
声がしっかりしてきたし、なんだかいい味が出ている。
皇帝に忠義を誓っているという感じがした。
楊国忠と違ったのは、楊国忠は“皇帝と楊貴妃を守る”という忠義に対し、
陳玄礼は“皇帝と国を守る”という感じだったこと。
あやみん…ここ1年くらいでメキメキと…芝居というものに対して
“何か”を身につけた感じがした。

仙人・・・水輝涼(英真なおき)
ほとんど出番がないのに存在感があった。
セリ上がりで登場し、その重々しさと台詞の確実さに
下級生とは思えない重さと確実さを感じた。
本役比べて“不思議さ”という雰囲気はなかったけど、
何かあたたかさを感じることができた仙人だった。

裴力士・・・涼麻とも(にしき愛)
涼麻さんもウマい。どちらかというと若い役よりも
こういうある程度年を重ね、役的に重みのある役のほうがいい味が出て
ウマさを感じる。

李林甫・・・大河睦(麻園みき)
睦氏も涼麻さんと同じ。セリフに重みを感じさせることができる人。
皇帝を皇帝でいさせるためには本当にこんな人がいただろうなぁ…と思えた。

梅妃・・・南海まり(陽月華)
今回、楊貴妃よりもなまめかしさがあった。
匂い立つような美しさがあった。
彼女の楊貴妃も見てみたかったなぁ。

秦国夫人・・・音花ゆり(仙堂花歩)
かわいらしかった。夫人…というよりも“お嬢ちゃま”“姫君”

安禄山・・・大真みらん(安蘭けい)
ウマい。ももこはウマい。彼女の玄宗皇帝が見てみたかった…正直な話。
本役の安録山と少し違った感じがした。
とても忠実に見えるのに実は野心に燃えているというのが
途中からありありと見えて見ていてハラハラどきどきした。
トウコちゃんとタニオカくんの安録山のちょうど中間……という感じ。
楊貴妃に迫るあたりはいやらしさもなく、“切り札を手に入れる”というふうで
逆に冷たさを感じた。
本当にいつの間にこんなにウマくなったんだろう。
表情もとても豊かで見ていて楽しい。

高力士・・・美城れん(星原美沙緒)
美城さんはいつも巧い。
研7とは思えないウマさ。
玄宗と年齢が変わらない感じがとても自然で
頭がキレる…そして皇帝に仕えるというよりも支えるという“右腕タイプ”
穏やかでいて冷静にモノゴトを判断し、冷静沈着。
どの衣装にもよく映える美しさも見応えがあった。
この人の芝居はけっこう好きだなぁ…としみじみ思った。

楊貴妃・・・陽月華(檀れい)
楊貴妃…というよりもやはり梅妃。
本役と比べて物静かさがなく、勝ち気に見えた。
だから“玄宗と楊貴妃”ではなく、“玄宗と梅妃”物語だった。
楊貴妃といる玄宗を本公演で見て、新公では梅妃といる玄宗を見た…。
やはり学年が違うからかたおやかさに欠けた。
いや、でも本公演の梅妃は…絶品だもんなぁ。
誰にでもどんな役でもピッタリ合うワケじゃないもんね。
ウメちゃんには梅妃があってる…っていうことだね。

元気はつらつのウメちゃんには少し気の毒な役だったかも。
「梅林がほしい、梅妃の御屋敷がほしい。」というあたりは、
玄宗を困らせるために言っているのではなく、
本気で言ってるように見えてしまった。

玄宗皇帝・・・柚希礼音(湖月わたる)
なんでもできちゃうレオン。
最初に書いたように本役を食ってしまう勢いのあるレオン。
でも今回は衣装や所作事が多すぎて、いっぱいいっぱいだったようだ。
下手ではない。できていないワケではないけれども…いつものレオンじゃなかった。

セリフ運びも本役とそっくりになってしまっていたし、
いつもの“大きさ”があまり感じられなかった。

どちらかというと"若き日の玄宗皇帝”そんな感じがした。
いや、新公なんだから完璧でなくて当然なんだけど、
できる人たちだからどうしてもコチラ側も期待してしまう。

さすが本役は貫禄がある…としみじみ思った。

時代設定、その時代のお衣装や所作事、セリフ回し、
全てにおいて本役さんたちも大変だ…ということなのだから、
新公なら、もっと当然のこと。

でもももちゃんを始め、美城さんやその他の重鎮の役をした人たちのウマさは
その新公の域を超えていたかもしれないなぁ。

立ち回りのシーンは、少しスローだった。
スローモーションを見ているようで…そのおかげで違和感はなかった。

そうそう、ペルシャからの珍しい鳥を贈るシーンで
安録山が「珍しい渡り鳥」と言った。
すると「バンザイバンザイ、シンジンコウエン、バンザイ」と鳥がしゃべった。
それを聞いた玄宗皇帝は「これは渡り鳥ではなく、ワタル鳥だろう。」
と切り返した。

そしてレオンは最後の挨拶で、
「ペルシャの鳥のシーンでは湖月わたるさんにもご協力を頂き……」と
照れくさそうにうれしそうに挨拶をした。

最後の挨拶の時に、少し、言い損ね、言い直したレオンを見て、
ももちゃんがとてもいい顔で笑っていた。

カーテンコールで、「あ、あ……」という感じでいるレオンの背中をポンと押し、
前に出るように促して……また笑顔でレオンを見つめていた。
そのももちゃんの笑顔がとても印象的だった。

新公らしい、新公だったなぁ。


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春吉

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